台湾中部、台中車站のそばにあるホテルの一室で目が覚める。時刻は5時半前。日本時間なら6時半前。何時も起き出す時間と一緒だ。

 窓外には駅前にある、聯統客運のバス乗場。国光客運のバス乗場も部屋からは見えないが、ホテルの真ん前にある。そんな交通の結節点から高鐵台鐵ジョイントパスを使う二日目を始める。
 ホテルは食事つき、7時からだが、今日は6時過ぎにはホテルを発つ。もう少しゆっくりと過ごしたいのだけど、未乗線を旨く組み合わせて乗ろうとすると朝早くから動く行程を立てざるを得ない。
 6時にチェックアウトして、駅に向かう。

 国光のバスが相次いで各地に出発してゆくのを見送ってから台中車站へ。

 新竹と同じく、日本統治下に建てられた立派な駅舎が構えている。ただ、この後ろには新しい高架線と新しい台中車站が姿を見せている。高架化が完成した暁には、この駅舎はどうなるのだろうか。
 今日は少々南下する事から始める。

 列車は相次いで出発する。まずは区間車に乗るので、ジョイントパスの券面を見せて駅構内へと入る。南下するホームは地下道を渡っての2、3番線。この辺りは日本のローカル幹線の主要駅と同じような作りであり、雰囲気である。

 3番線には昨日、内湾線で乗ったのと同じ顔つきをした気動車が停まっている。顔つきは同じでもこの車両はDR3100。非電化区間で使われるディーゼル自強。この列車は西部幹線から南廻線に入って台東まで行く列車。

 ホームの上には売店がある。台中名物、太陽餅を扱う店なのだが、

 この時間限定なのか、一日中販売しているのか分からないが、食事になりそうな、油飯なるものが売っている。30NTD。日本円で100円ぐらいだからおにぎり感覚か。試しに1個買ってみる。

 まもなく西部幹線を南下する竹南行区間車がやって来る。目的地の竹南は、昨日、新竹から台中に向かう途中に通った駅。台中の北に当たるのだけど、その理由はおいおい。
 やって来た区間車は空いている。ロングシートをぱらりと埋めるのは部活に行くような高校生、朝早い通勤客。日本と雰囲気が変わらない。
 空いているのを幸いに

 先程買い求めた油飯を食べる。具のないおこわ、と言った感じ。1個頂けば十分腹持ちしそうな、案外と重たい朝食になる。
 区間車は西部幹線を下って行く。高鐵接続の新鳥日から南は、また未乗区間。そして、列車は成功車站へと到着する。本線を外れた側線に停まり、ドア開け。乗り降りなくドアが閉まる。

 次の停車駅は、追分。
 山線をまっすぐ進むと次は彰化。そして追分は海線の駅である。山線と海線の南側の合流線は単なる合流をする路線の他に、山線の北側から海線の北側を直接結ぶショートカット路線がある。立派にも成追線という名前もついている。そのショートカットをする区間車が1日何本か設定されていて、今日乗ったのは、山線から海線に直接向かう今日最初の区間車。
 列車は山線に沿って走るとカーブして山線と分かれる。そして彰化からの海線が近づいて来て合流。追分に到着。

 これで成追線、全線踏破となる。時刻は6:36。台中から区間車に20分乗っただけだが、そうなる。

 列車は向きを反転、北上して竹南に向かうが、今日はこの先、まだ南へ向かうので追分で降りる。彰化へ向かう列車を待つ。間違って乗っちゃったお客さんと思われたのか、追分の駅員、客に関心を示さないまま、駅舎へと消えてゆく。
 一度改札を出てみる。



 日本統治下の建物だろう。日本の地方路線のローカル駅と何ら変わらない雰囲気。日本の追分駅と写真を並べてみたいと思ったけど、写真を持っていなかった。

 池づくりに精を出すのも日本が残した文化なのだろうか。

 日本の追分駅に無いのは、ICカード読み取り機。台鐵、地方路線までICカードが普及していて、この辺りは日本のずっと先を行っている。
 間もなく彰化へ向かう区間車が来るのでホームに上がる。一応はジョイントパスを出したけど、駅員は乗客に関心がないのか出てこない。

 彰化へ向かう区間車に乗る。まもなく成追線が分かれて山線がやってきて、合流。朝のこの時間は列車ダイヤが正確なのか、スムーズに合流する。山線の線路を暫くかけると彰化に到着。時刻は6:55。
 台中から彰化へ向かう途中に追分によって成追線を踏破する。ここまでは非常に行程の出来が良かった。

 この直後に台東に向かう自強がやって来る。この自強に乗って まで行くと台鐵最後の普快車に乗る事が出来る。台東まで普快で行った後は、普悠瑪に乗り寄り道をしつつ台北を目指すのが第一案だったのだが、普悠瑪の指定が取れずに撃沈。

 台中始発のディーゼル自強がやって来る。台中で相当なお客さんを載せているが、早速降りる人もいる。乗る人が乗ると自強は立客多数。紫煙を残して南下してゆく。 

 次にやって来た区間車に乗る。斗南ゆきは最新のEMC800、8連。体育着の高校生が多数乗る。斗南工高とか斗南商高とか、学校名が書いているのがまた、日本とそっくりでどこを旅しているのだろうという気分になる。

 セミクロスシートが並ぶ車内。高校生で立客が目立つのに混ざり、一駅一駅丁寧に停まって南下してゆく。大きな駅に着くと高校生が降りてゆき、だんだんと車内が空いてくる。30分程で次に乗る未乗線の起点、二水に到着する。

 ここは集集線の起点となる駅。1〜2時間に一本、区間車が西部幹線二水を起点に、山奥へと分け入り、終点の車埕駅までの29.7㎞を結ぶ路線をこれから往復する。

 次の発車は8時ちょうど。まだ10分少々時間がある。


 昨日は内湾線でお世話になったDRC1000が出発を待っている。顔を見るとノーマルなDR1000だけど、

 側面はイラストが描かれている。キャラクターと一緒に蒸気機関車も描かれているから、何か台鐵に関係したイラストなのだろうが、事情は良く分からず。
 北行区間車がやってきて乗り換え客少々。座席がちらちらとして埋まらない状態だが、8時になって出発の合図。ドアが閉まる。
 集集線のか細いレールを踏みしめて、列車は走り出す。西部幹線のレールと別れると、曇り空の下、青々とした田圃の中を走るようになる。

 稲穂があまりに幼いが二期作目、でしょうねぇ。一年に二度収穫が出来るなら、さぞかし豊かになるでしょうねぇと思うけど、そうは簡単に行かないのか。
 今にも降り出しそうな天気の下、DR1000はゆっくりと進む。ゆっくり走って忘れた頃に無人駅が現れ、足を止める。乗り降りする人もないまま、車掌がドアを閉め合図を送る。またゆっくりと走り出す。

 ますます空が暗くなる頃、線名にもなっている集集に到着する。

 久しぶりに駅員のいる駅。二水から乗って来たお客さんが降りていく一方で乗って来るお客さんも居て、むしろお客さんが増える。

 お客さんを増やして集集出発。濁水渓がやってきて山が迫る。急峻な台湾島の脊梁山脈に分け入って行く。昨日の内湾線の竹東、今日の集集線の集集。どちらも谷口集落、と言う事か。
 山の中、空は重たい曇り空。エンジンがうんうん唸っての登り坂。水里の駅を出ると濁水渓と別れて、さらに山へと分け入ってい行く。
 二水から50分。終着の車埕に到着する。

 ここからさらに山へと分け入ると有名観光地の日月潭があるのだが、日月潭へは台中からのバスが便利らしい。

 何時の間にか雨が降っている。集集から乗って来た子供の団体がホームに集合して改札に向かうが、ずぶ濡れだ。

 開業時は木材の積み込みでもあったのか、広い構内が展示施設になっている。この雨で無ければ少しゆっくり見たい所。
 折り返しは9時ちょうどの出発。後ろの車両に乗ったらほぼほぼ無人。次の水里で天秤棒にバナナをぶら下げたお客さんが乗り込んでくる。行商人なのか、どこまで行くのか、興味は尽きないが、あまりじろじろ見るのも申し訳ないので、知らないふりをする。
 気動車は坂道を下り来た道を引き返す。集集でも少しお客さんを集めて、列車らしくなる。この時間帯、まだ観光客で賑やか、という風にはならない。
 濁水で下り列車とすれ違い。

 二水を9:20に出た列車は観光客がちらちら乗っているようで、こちらの列車と記念写真を撮り始めたりして、置いて行かれそうになっている。
 列車は里に下りてきた。

 この辺りの田圃、田植え直後、のようだ。今から育て始めて十分収穫できるんだねぇと昨日と同じ感想を持つ事になる。
 下り坂だけど登りと同じ50分で振り出しの二水に戻る。先程の天秤棒さん。すっと天秤棒を持ち上げるとさっさとホームへ。そしてエレベータを使って早々に駅舎の方へと向かう。あまりに素早いので驚いてしまった。
 西部幹線に沿うローカル線。この先、嘉儀からは阿里山鉄道という大物がいるけど、大物過ぎて今回は扱えない。さらに台南には少々枝線があるが、これは後日にして、西部幹線を北上する。


 一番線で列車を待つことしばし。

 二水始発の区間快車に乗る。使用される車両は区間車と同じで、停車駅が絞られたいわば快速電車。列車は台中行きだが、今日は彰化で降りる。この後は昨日のうちに指定券を抑えた自強号に乗る。待ち時間が40分程あるので、その間に扇形車庫を見ようかと思う。
 駅舎と反対側、台北寄りの扇形車庫があるのは車窓から見えるので分かっており、駅の脇直ぐの跨線橋を渡って、台北寄りへと歩いてみる。

 途中、こんな案内があって道には迷わないが、どうも本来の道とはちょっと違うと思われる。とにかく、目的の所には着く。着いたが、

 門が閉じている。
 月曜休館。火曜から金曜は午後1時から4時まで。土日は10時から16時。今日は金曜日である。

 残念だ。
 しょんぼり彰化の駅に戻る。すぐ傍らに線路を潜る地下道があって、こちらが駅からの道らしい。

 途中、線路を判断で扇形車庫を無理矢理に撮って、駅へと戻る。

 この後乗るのは、11:17の117列車自強号。昨日台中の駅で指定券を抑えている。西部幹線側のローカル線には乗ったので、今度は東部幹線側を乗りに行く。指定券は台北まで。
 ホームに入って列車の到着を待っていると

 EMU300がやって来る。基隆7:35→10:50彰化の自強109列車らしい。側線に入るとパンタグラフを落とし、夕方の彰化発基隆ゆきになるまでしばらく休憩の様子。

 そして昨日も乗ったE1000形の自強がやって来る。手書きの指定券に書かれた座席に座る。満席になって列車、出発。
 朝来た線路の巻き戻しだが、厳密にいうと彰化から成功までの山線は初めての乗車となる。実際には乗ったも同然だが、成功を過ぎて初めて台北から高雄までの東部幹線、全て乗車と言う事になった。
 高鐵接続の新鳥日を過ぎると沿線を新しい高架が沿って走るようになる。建設中の台中捷運らしい。
 台中でお客さんが入れ替わる。

 通路を挟んで向かいの席が空くので撮ってみる。勿論台中からのお客さんですぐに席が一杯になったけど。
 台中で降りたい以上に乗ってきたお客さんが多くなり、多少の立客を乗せて列車は山線を走る。先程彰化を歩いたときは晴れていた空、台中市街を抜ける頃から暗くなってくる。

 いまにも降りそうな空の下、後龍渓を渡る。