ペナン島に朝がやって来る。
 日本とマレーシアの時差は1時間。でもすぐ北のタイと日本は時差2時間。マレーシアの時間は少々無理がある。昨日の晩は遅くまで明るかった代わりに今朝は朝が遅い。

 外には古びたジョージタウンの街並みが見えている。朝はすでに8時。さすがに明るくなっている。
 今回の滞在。ホテルでの朝食は付けていない。どうせ明日は早朝のうちにチェックアウトしなくてはならない。2食中の1食を捨てなくてはならないので、食事は付けていない。
 朝食は付けてないけど腹は減るし廻りには食事を出す店は幾らでもある。どれか一つで朝食を食べたら、インド人街に両替に行こうと思う。出掛ける。
 ホテルの近く、インド人が経営しているらしい店がいくつかある。

 そのうちの一軒に入ってみる。看板、一番大きく買書かれいるのはマレー語だけど、タミル語に広東語と様々な文字が書かれている。ペナンは文化と文明の交差点。ただ一つの看板が無言でそのことを教えてくれる。
 看板は多国語、お客さんも多国人種だけど、メニューはインド系のお食事。お客さん、ムスリムもいるけど、一番多いのはターバンを巻いたインド系の人。インド系にもヒンズー系とタミル系がいるみたいだが、その違いは良く分からない。

 先に飲み物が届く。アイスコーヒーと、アイスミルクティの組み合わせ。そして、

 ロティを食べる。余り馴染みがないが、無発酵パンの一種だそうだ。甘く味付けられているけど、菓子のそれとは違ってほんのりとした甘目の味。
 さて、両替をしにゆく。前回ペナンを訪れた時の知恵でインド人街まで足を伸ばす。インド人街は今いるところからは少々距離があるのだけど、これも前回の知恵で移動。
 コムタまで行き、バス乗場へ。待ち時間少々。やって来たのは

 ジョージタウン中心街を循環するバス、CAT。バタワースへのフェリーが発着するジェッティにいまいるコムタ。二つのバスターミナルと市内中心地の主だった観光地を巡るバスで、運賃は無料と言う太っ腹ぶり。経路は観光客向けなのだが、

 乗っている人は地元の人が圧倒的に多い。
 中心地をなめるように巡るので、若干遠回りのCATだが、無料だから文句は言えない。どうせ急がない旅だし、遠回りでも構わない。
 マスジッド・カピタン・クリン通りにバスは差し掛かる。通りの名前になっているマスジッド・カピタン・クリン・モスクを通り過ぎ、今度は中国寺院の観音寺。バス停はキリスト教教会のセントジョージ協会の前。

 この近くのインド人街に点在する両替商を訪れるのが目的だったのだけど、真ん前の教会、ドアが開け放たれている。

 折角なのでちらっと見てゆく。時刻は10時過ぎ。青空が見えているけどさほど暑くは無く街歩きをするにはちょうどいい感じだ。
 目的の両替商へ。1万円が310リンギぐらいにはなる。滞在期間は短いしこれだけあれば十分と思われる。
 短期間の滞在で、いくら両替をするかは難しい。あまりギリギリだと気分的に滅入るけど、余計に両替しても仕方ないし。多少余って次回使えるぐらいがちょうどいいのだが、今回はどうなるだろうか。
 さて、Jettyに向かってぶらぶら歩く。

 通りにはインド人街が広がる。ケバケバしいドレスが並ぶ衣料品店。大音量のインド音楽。文化の交差点、ペナンならでは、変化が楽しめる。
 インド人街を抜けると間もなく対岸、バタワースへのフェリーが出るJetty。バス路線の起点でもある。その隣、

 少し歩いてみる。ここはあくまで人が普通に住んでいる所なので遠慮しいしい。

 木製の桟橋の脇、民家が並んでいる。人が住んでいるから当然、電柱はあるし、通路には水道らしい配管が通っている。案外とインフラが整っているんだなと思う事になる。更に先に進むと

 進むに従い海が現れる。ペナンの海はお世辞にも綺麗とは言えない。ここの水上集落も下水はそのまま海へ流しているのかも知れない。更に先へ行く。だんだんJetty、桟橋という名前に相応しい景色になる。

 先端までたどり着く。林さんの木製桟橋は尽き、その向こうには立派な公共の桟橋が行く手を遮る。振り返ってみると

 こうしてみると本当に海の上に住宅が建っているのが分かる。

 この辺り、同じように同族で住んでいる水上集落がいくつかある。林さんちの桟橋は比較的小さい方らしい。幾つか廻っても仕方ない所ではないので、どこか先に進む。予定は無いけど。
 Jettyのバスターミナルに行って再び無料バス、CATに乗る。降りて向かったのは、

 ペナンで一番古いホテル、イーストアンドオリエンタルホテル。幾らでもあるジョージタウンコロニアル様式の建物。その中でも別格と言ってもいい、格式あるホテルである。ちらっと見学。やっぱり遠慮しぃしぃ。


 海辺の建物なのですぐそばは海になっている。でもさっきのJettyからそんなに遠くない。だから当然のように、海はあんまり美しくない。
 さて街中へ。CATには乗らずに少し歩いてみる。まもなく

 道の真ん中にレールが埋もれている。昔はジョージタウンにも路面電車が走っていたらしいのだが、調べてもあんまり情報が出てこないので、なんとも。香港と同じくイギリスの息が掛かる街だから同じようにトラムが走っていても可笑しくは無い。
 ペナン博物館に行けば何か見れるのかも知れないけど、今日は金曜日。イスラム教の礼拝日にあたるので、博物館はお休みである。もう少し街を歩く。

 コロニアル様式の建物が目立つエリアに入る。日常に溶け込んだ世界遺産が青空によく映えている。整えられたというよりは、あるものは時代に合わせて、或は時代に取り残されて、と言う風であるがままなのが、良い。

 中には朽ちてゆくような建物もある。この隣りは完全に廃墟だ。でもそれもまたいいと思う。
 間もなく日本通りに入る。第二次大戦よりもはるか前には日本人街だったところだ。今は通りの名前だけに日本が残る、華僑の街になっている。その一角、

 美味しい事で有名な飲茶の店が開いていた。前回は閉じていて入れなかった店である。時刻は12時を廻った所。お昼時だし折角なので入っておく。
 最初にお茶をお願いする所からして香港スタイルの飲茶。この辺りに限らず東南アジアの華僑は華南出身者が多いので、食事も文化も華南のものが自然と多くなる。

 店内は半分ぐらい席が埋まっているだろうか。そんなに大きな店ではないけど、店内、飲茶はワゴンスタイルで供される。香港でお目にかかれなくなった方式だ。

 ワゴンに乗っていたものから選ぶのですぐにテーブルが一杯になる。焼売、餃子に春巻き。お馴染みの面々が並ぶ。この辺りは一定のレベルを超えていて美味しく頂く。

 追加で小籠包。本場を遥か離れた南の地のそれは、若干残念な感じ。
 冷房は無く、天井をファンが廻る中で飲む熱いお茶は脂をしっかりと洗い流してくれそうな感じで、汗は吹き出るが気持ちは穏やかになる。そんな気持ちでいると

 店内、坊さんが廻りだす。つい喜捨をする。そんな習慣、ないのだけど。
 滞在20分程。その間にお客さんは増える。待っている人はいないが頂くものは頂いたので席を立った。外に出ると容赦ない陽射し。ペナン島ジョージタウン。正午を過ぎてそろそろ外にいるのが辛い時間帯だ。
 一番暑い盛りは妻の買い物に宛てる事にして、コムタに向かう。CATにのるような距離でもないので歩いて向かう。目的の店を一つ、もう一つとお付き合いして2時間ほど。14じとなっていよいよ暑いので一旦ホテルに戻る。しばらく休憩。
 15時を過ぎて再始動。今度はジョージタウンの北西にある街、ガーニードライブに向かう。ここはペナンでも一番有名なホーカーがあるのだけど、夕方、ホーカーが開く前は買い物で涼んだ後に寺院を見学しようかと思う。
 コムタのバスターミナルから103系統に乗る。今度は有料、普通の路線バスなので運賃を払うと、

 切符を貰える。1.4MYR。往復利用が出来る訳でもなく、単なる支払い証明でしかないと思われるが、律儀にくれた切符を律儀に仕舞いこんで席に座る。

 地元客に混じってガーニードライブへ。道は混んでいる。ガーニードライブまでは2〜3㎞ほどだが、15分少々で目的地に運ばれた。

 ここ、と言う所で降りる。時刻は16時ちょっと前。多少陽射しが弱くなってきたとはいえ、まだまだ暑い盛り。まずはショッピングセンターに避難する。
 ジョージタウンのコムタよりも大きな施設で、店舗も海外ブランドのものが多いようだ。日本以外ではあちこちで見かける某極度乾燥しなさいも店を出してみて、怪しげな日本語の入ったTシャツを売っている。「会員証な」と書かれたTシャツが日本円に換算すると5000円近くの価格。冗談半分で出せる金額ではないのでやめておいた。
 店内を眺めた後で帰りのバス経路を確認したく、外に出る。先程バスを降りた道は一方通行。ジョージタウンに行くバスはどこを通るのだろうと海側の通りを偵察する。


 青空は美しいが海はそれほどでもない。まぁ午前中に見たJettyやイーストアンドオリエンタルホテルからそんなに距離がある訳でないし。この先、北西に行くとペナン島のビーチリゾートがあるのだが、どの程度の海なのだろうか、さて。
 目的のバス停は発見できず。時刻は17時。ホーカーが開くまではまだ時間があるものと思われるので、もう一か所、時間つぶしをする。今度は仏教寺院。先程、バスに乗って来た通りに戻って若干、ジョージタウンの方へと引き返すように歩いて行く。

 向かった先は仏教寺院。ジョージタウンにあったのは中華系の寺院だったけど、こちらはビルマ式の仏教寺院。つまり大乗仏教なのでだいぶ感じが違う。煌びやかな仏像を飾るその奥には、

 大乗仏教の世界観を示した飾りがあちこちに。こんな寺、タイにもあるけど、一応はイスラムが国教のマレーシアでお目に掛かれるとは思ってなかった。

 建物の廻りに白象を並べる感じはスコータイやチェンマイでもおなじみのスタイル。タイの歴史に触れるとビルマは悪の権化みたいな勢いで扱われているけど、文化的には近いのだと言う事が良く分かる。
 ビルマ寺院の向かいには タイ寺院もある。こちらの見学時間は17時までだったようで、中には入れたけど目玉の涅槃仏の前まではいけない。

 建物の外からちらっと覗くだけで退散する。
 そろそろ18時。日もだいぶ翳って来た。まだ早い気がするけど、ガーニードライブの名物、ホーカーに足を伸ばす。寺院からは1㎞程。バスに乗るほどでも無いので歩く。歩道が悪いのが難点だが、まぁどうにかなる程度の道。
 ホーカーはちょうど店を開け始めた所。早々にお客さんも入っている。まだ日の当たる席は敬遠されていて、日蔭の席を中心に埋まっている。自分たちも日蔭の席に座る。普通、ホーカーは飲み物屋が仕切っていて、座ると同時にドリンクの注文をするのが常なのだけど、ここは注文を取りに廻る人、いない様子。
 適当に食べ物飲み物を集める。座った辺りはマレー料理の屋台が多くて、アルコールは扱っていないのだが、隣のエリアは中華料理が多め。こちらには缶ビールが売っている。

 定番のサテーを買い求め、

 そしてナシゴレン

 缶ビールはこちらではお馴染みのTigerとなる。そして追加で

 カリーミー。色々種類を食べるには二人でもまだ少なくて、こういう時は大人数の方が嬉しい。周りはマレー人の家族連れ、友人連れ、そして中国人らしい団体の観光客が目立つ。二人と言うのはまだ少ない方だ。
 日がだいぶ翳る。日の当たっていた席も影に入った。ホーカーはこれからが営業の本番、掻き入れ時だろうが、ジョージタウンからの遠征なので早めに引き上げる。帰りもバス。

 幹線道路沿い。何の御呪いなのか線香が焚かれている。行き交うクルマ。ジョージタウンから来るバスは多いが、ジョージタウンへ行くバスはなかなか来ない。待つこと10分以上。

 一台がやって来る。満員。すぐ後にもう一台来たのでそちらにしたが、こちらも満員であった。更に後のバスを待っても仕方ないので、満員のバスに乗る。
 バスは先程来た道よりも更に内陸側の道を走って行く。乗り降りはあるが、席は空かず、むしろ混んでくる感じ。夕方のラッシュ時だからだろうか、道も混んでいる。
 次第に街並みに見覚えがあるところとなる。ジョージタウンの宿泊地に近いエリアに入っている。前回訪れたホーカーが見え、昨日訪れたホーカーとなり、GAMAの交差点を左へ。すぐのバス停で降りる。何もコムタまで行く事はあるまい。
 ホテルに戻る。とは言え、そのままホテルに引きこもるのは惜しい。ジョージタウンは日が暮れてからが一日の本番、といって良い街である。荷物を置いて一休みした後、改めてホーカーに行くことにする。ホテルの近所、昨日行った所でもいいけど、ちょっと場所替え。昼間飲茶した日本通りに近いホーカーまで足を伸ばす事にした。

 店の軒先には先程とおなじように線香が焚かれている。そのな様子を横目に歩く。コムタの先、コロニアル調の建物が目立つようになってくると、

 ランタンだ。これはこれで幻想的。

 目的のホーカーに着く。ここは地元民しかいないようなホーカー。華僑の経営らしく

 瓶ビールがメニューに置いてあった。勿論頂く。
 先程食べたばかりなのでそんなに食べる気はしない。軽く一品ずつ頂いてみる。

 青菜のガーリック炒め。安定的に美味しい。美味しくならない筈がない。そして


 こちら、薄餅と書いているもの。これが衝撃的に口に合わなかった。大概のものはそれなりに食べてしまうけど、これは生理的に口が受け付けない。薄餅自体がダメなのか、この店の薄餅がダメなのか、それは判断できない。
 半分ぐらいは頑張って食べたけど、最後はギブアップ。すごすごとホテルに戻る事になる。

 夜9時。宵っ張りのジョージタウンに取ってすれば夜はこれから、という時間だろうが、今日はホテルに戻る。荷造り少々。明日にはジョージタウンを発たねばならない。

 ホテルの部屋で日本から持ち込んだビールを開ける。酒類の高いマレーシア。滞在期間中、部屋飲み用のビールぐらいは日本で待っても罰はあたるまい。今回はビールを持ち込んだから値段は一緒ぐらいだが、第三のビール、なら持ち込みの方が圧倒的に安いし。

 22時。まだまだ賑やかなジョージタウンだが、明日は4時過ぎには起きたい。そろそろ寝る事にする。