タイは北線の途中、ウッタラディットと言う町のホテルで朝を迎えた。時刻は5時半過ぎ。日本時間なら7時半か、と妙に納得して起き出す事になる。
 少しずつ夜が明けるところである。少し恥辱を進めておく。そして荷造り。
 今日はウッタラディットから先、タイ国鉄北線で終着のチェンマイまで進もうと思っている。
 乗るべき列車の候補としては二つある。一つは急行51列車。昨晩22時にバンコクを出た列車で、ウッタラディットには6時。そしてチェンマイには12時半と言う列車。もう一つは普通407列車。タイ北線の途中駅、ナコーンサワンを5時に出て、ウッタラディットに9時過ぎ。チェンマイには15時前に着くという列車だ。
 客車列車の方が魅力的ではあるけど、6時は少々早すぎ、そこで407列車に乗る事を前提に今日は準備を進める。そうなると余裕があるから、恥辱を1時間ほど進めてから、ホテルの朝食を食べに出かける。
 
 ホテルの食事、あまり期待していなかったのだが、案外と揃っている。お客さんはタイの人が多いが、外国人も少々。観光客風ではないが、どんな人なのだろう。
 9時の列車に乗るのに、8時半にチェックアウトする事にして部屋に戻る。
 
 すっかり明るくなったウッタラディットの街。高い建物が殆どない。地球の歩き方には出てこない街ではあるし、観光客にはおよそ縁がないと思われる街だけど、ホテルの部屋から見ていても、確かに冴えない街だなぁという感想しか持ちえなかった。
 8時半にチェックアウト。ドアボーイがタクシーを呼ぶか?と聞いてくるが、昨日の白タクのおかげで駅とホテルの位置関係は分かっている。鉄道駅まで歩くというと、変な客だという感じで返された。歩くが変なのか、鉄道駅が変なのか、両方変なのかは分からない。
 
 雨季なので空は曇っている。気温も東京よりは涼しい。街は昨日閉じていた店が開いていて、客が麺やら何やらを食べている。こっちの方が良かったかなと思いつつ昨日の道を駅まで。
 途中、左右に分かれるところがあって昨日の記憶だと右なのだけど、駅は左と標識に出ている。標識を信じて左に曲がる。
 
 まもなく、機関車が見えてくる。駅なのだが、これは駅の裏口。車両基地の方だった。駅舎は先程の所を右に行って踏切を渡るのが正解。
 
 構わず歩いてみると装甲車が見えてくる。現役ではなくて展示物、みたいだけど、裏を歩かないと見つけられない一品だった。
 
 結局、駅構内の外れで線路を渡って駅の表側へ出る事になる。
 
 昨日は夜で寂しい感じだったウッタラディットの駅前、明るい時間に見ると商店もそこそこあり、人の往来もあってなかなか賑やか。たまにメータータクシーが来たり、ソンテウが来たり。交通機関もそこそこあるようだ。一見の外国人にはハードルが高そうだけど。
 さて、チェンマイまでの切符を入手する。407列車の三等車。チェンマイまで乗って51バーツだった。物価の上がるタイで国鉄の運賃は相対的に安くなっているのだけど、チェンマイまでの250?、6時間乗って、500ml缶のビール1本に相当する51バーツというのは相当に安い。昨日はちなみに10倍の510バーツだった。二等とか、特急とか、そんなのが付くとそこそこの値段になるけど、三等の何でもない列車は本当に安価。
 
 出発の案内が並んでいる。偶数は上り列車。バンコクに向かう快速列車のうち、デンチャイ始発の112列車は遅れている。本来なら7:30発。前夜の下りが遅れているのだろう。チェンマイ始発の102列車には遅れは無いが、まだだいぶ先の事だから、遅れるとも遅れるとも分からない、というのが正しいのかもしれない。
 一方の下り407列車、チェンマイ行きは定刻の予定。バンコクと関係なく動く列車なので、踏切遅延がないのと、北線の徐行区間が絡まないから定刻、なのだろうと想像する。
 待合室で、ホームで、と思い思いの所でみんな列車を待っている。バンコク行きの112列車のお客さんが多いのかなと勝手に想像。407列車が来るまでにひとまず水だけ確保しておく。普通列車なら車内販売がいるに違いないが、念のため用意だけはしておく。
 ところで、待合室で見かけたこのポスター。衝撃的である。
 
 車内禁酒、だそうである。そういえば駅構内の売店にも酒類は売ってなかった。酒の安いタイだが、売るのは割と制約があって、お昼と夕方から夜間にかけて以外は販売禁止だったりする。今まで、鉄道構内や列車内では普通に飲んできた。現に、2年前は夜行列車でビールを飲んだけど、何時の間にかこんな規制が出来ていた。まぁ、車内禁煙といいつつ、車両のつなぎ目、外に出ている部分では吸う事が黙認されていたりもするから、コーラにウィスキーを混ぜて飲むのは黙認とか、そんな抜け道がいくらでもありそうだけど、とにかく、妙な規制が出来てしまった。
 ホームで列車を待つ。昨日、特別急行で降り立ったウッタラディットのホーム
 
 立派なホームだ。屋根も立派で、ここまで立派なホームはピサヌロークにもない。
 
 ホームの端では犬が早くも昼寝中。真昼間の暑い時期にはだらしがなく寝ている犬をたくさん見かけるが、この時間、まだまだ十分涼しいのだけど。すっかり夜行性になっていて、昼間は暑さに関係なく眠いのかも知れない。
 407列車のウッタラディット出発は9:11。9:07には到着するのが定刻だが、少々遅れる。まぁタイの鉄道だし、多少遅れても構わないのだけど。待つことしばし、9:15になって列車がやって来る。
 
 ナコーンサワンを早朝5時に出てきた普通407列車。気動車3両編成が満員の乗客を乗せて到着する。そしてたくさん降りる降りる。近隣では大きな街なのだろう。たくさん降りて行って、でも残っている人は残っている。そして乗る人も居たから、
 
 気が付くと座れない。このまま座れずにチェンマイまでは辛いが、さすがに途中、どこかで座れるだろう。あまり気にせずに様子をうかがう事にする。そして早速お隣の駅、シラアットで空席が出来て座れる。
 
 シラアットの駅で暫く停車。こちらは操車場があるそうだが、すっかり草生して、使われないらしい貨車置き場になっている。
 シラアットで停車少々。その間に、早速車内販売の人がやって来た。
 
 菓子だったり、おかずだったり、飲み物だったり。色々な物を売りに来る車内販売はきっとタイ国鉄未公認。駅の近くに住む人が、列車が停まっている間だけ乗ってきたり、途中の駅まで乗って、上り列車で折り返して行ったり、と色々なパタンがあるようだ。共通していえるのは優等列車にはあんまり乗ってこないで、普通列車とかの方に出没する機会が多いと言う事。
 
 車内販売の後で検札が廻って来る。特別急行普通列車も、切符としては同じ形態の切符を使っているから、大きな乗車券を差し出して、鋏を入れて貰う事になる。
 シラアットの発車が9:28となる。小さな駅にも停まりつつ、列車はこの先、チェンマイへ向かう。昨日はずっと田圃を眺める旅だったけど、今日は山岳地帯に分け入る。シラアットのすぐ郊外、構外かもしれないけど、にある小さな駅に停まってお客さんを一人乗せると濃い緑の中へと分け入って行く。
 先程の車掌とは別の制服が数人やってきて、車内で一人ひとり、声を掛ける。同じボックスの人が突然席を立って後ろに行く。これ、鉄道警察のIDチェックだ。席を立った人はどこかに置いた荷物にIDを入れているのだろう。もう4年前になるけど、タイ東線、アランヤプラテートまで足を伸ばしたときに経験したことがある。外国人の場合はパスポートを提示する事になる。
 いつくかのボックスを警察官が廻ってIDチェック。その間にどこかの駅に停まる。警官は早々に降りてゆく。結局、自分のボックスではIDチェック、行われなかった。
 列車はしばらく停まり、そして快速112列車とすれ違い。3等客車、2等客車、食堂車を連ねたバンコク行きは結構空いている。こちらの列車に1両車両を分けて欲しいぐらいだ。上り列車が発車した後、こちらも動き出す。
 
 昨日の水っぽい景色は消え去り、タイ北部の山岳地帯、チェンマイに向かっての登り坂に列車は差し掛かっている。冷房の無い車内。開けた窓からは案外と心地よい空気が流れ込み、暑さは感じない。タイのこの時期は雨季なので、太陽は照っていないし、列車が走れば涼しい風が車内を舞う。ファンが廻ってなくても十分に楽な旅になる。
 
 パーントンプンの駅を発車する。線路脇にあるのは腕木信号機。姿形は日本と多少違うけど、古い鉄道の匂いがプンプンするようなそんな光景が車内にも、車窓にも広がっている。
 列車の歩みが殊の外、遅くなった。エンジンがうんうん唸りをあげても速度が上がらない。エンジントラブル、ではなく登り坂のようだ。そして列車はトンネルに入る。長いトンネルが続くのかと思ったらすぐに抜ける。もう一本、短いトンネルを抜けると下り坂になる。列車は加速し始める。古い線路であるが故、できるだけ大掛かりな工事を避けて、短いトンネルで済ませようとしたルート取りだ。
 下り坂に差し掛かると今度は軽く転がるように走り出す。鉄道は坂道に弱い、のが常だけど、この先、終着までひたすら山岳地帯が続く。この日本製の気動車、どんなエンジンを積んでいるのか知らないけど、通い続けるには辛い道には違いない。
 車内販売が入れ替わりたちかわり、やって来る。食事だったり菓子だったり、いろいろな物を売りに来るけど、
 
 今度はドリアン売りが乗って来る。2個持って廻ってたけど、次に来た時には1個減っている。売れたんだ、と思ったら今度は別のドリアン売りが乗って来た。多くの車内販売が乗って来るけど、調整ゼロなのね。
 エンジン音が緩み小さな駅に停まる。全くの山の中で誰も乗り降りしないけど、小さな集落はある。出発すると線路沿い、工事現場が現れる。次の駅、ホァイライには、
 
 こんな保線車両が停まっていた。車両も信号機も前近代的なタイの鉄道だが、保線は力を入れているようで、北線、ここまで大部分の区間がコンクリート枕木になっている。徐行区間もあったけど、線路の保守が行きとぢいている区間ではしっかり速度も上がっている。つい最近、7月にタイ国鉄北線はダイヤ改定があって、優等列車を中心にスピードアップが行われている。遅れてばかりの鉄道がダイヤを見直したって無駄だろ、みたいな話もあるけど、現場を見る限り、それなりの裏付けがあってのダイヤ改定と思われる。無論、昨日のような例もあるから、もう少し先に改定でも良かったようにも思うけど、確実に進化してますよ、という光景を体北部の山岳地帯で見ることが出来た。
 列車はデンチャイへ到着。時刻は10:42。定刻10:17だから、まぁ多少遅れたかな程度で済んでいる。ナコーンサワンから5時間走って25分遅れなら、実に立派。ここは山間から見るととても大きな街で、バンコクからのデンチャイを目的地とする快速列車も設定されているぐらいだ。駅のホームも久しぶりに屋根付き。そんな大きな駅も停車は1分。乗り降りがあって相変わらず満席の乗客を乗せて列車は出発する。
 街を離れると久しぶりに田園光景が広がる。大きな街を養うための米櫃、と言った所か。しばらく田圃を眺める車窓が続いたのち、再び山岳地帯へ。山越えと言うよりは谷間をいう光景で、車窓には
 
 茶色く濁った川がまとわりつくようになった。線路も川の蛇行に沿って右に左に。そして決して渡ろうとはしない。どことなく飯山線から見える千曲川、あるいは信濃川を思い起こす光景が続く。
 再び上り坂。速度が落ちてゆく。次の盆地へと取りつくためのアプローチだろうか。その途中の駅でチェンマイからバンコクに向かう快速102列車とすれ違う。3等客車に2等客車を織り交ぜた列車は半分ぐらいの席が埋まっているように見える。定刻でもバンコクに着くのは21時。更に10列車と待ち合わせを行う。見ているとタブレット交換があるようで、ゆっくりと通過する列車と駅との間で、タブレットの授受が行われているのが見える。その後特別急行10列車ともすれ違う。
 そろそろお昼時。ウッタラディットで水は買っておいたが食事になるものは買っていない。いくらでも売りに来るからと思っていたが、混んでいる列車の窓側に座っていると、何を売っているのか良く分からないのでなかなか手を出しづらい。
 通路を挟んで反対側の人が紙の包みを買う。開けたのを見ているとバミーである。それならばと自分も買う。バミー、玉子麺の汁無しだからバミーヘン、になるのか。
 
 この包みがバミー。価格は15バーツ。これを開く
 
 こんな感じに麺と具材がと入っている。混ぜて混ぜてから頂く。屋台で出来たてを頂く方が美味しいだろうが、でもまさか、普通列車の中で麺を食べる事が出来るとは思っていなかった。
 バンコクで貰った時刻表を見るとデンチャイからチェンマイまで、ほんの数駅しか出てこないのだけど、実際には220㎞以上の距離があって、小さな駅やそれよりも格下の停車場がたくさん連なっている。バンコクからやって来る特急や急行は停まらないその駅にも、この普通列車は丹念に停まる。
 
 普通列車は1日1往復しかないのだが、そんな列車でも降りる人がいて、乗って来る人がいる。帰りはどうするのだろうか、と思う。普通列車と言えども案外と長距離の利用が多いみたいで同じボックスの人たち、シラアットからすでに3時間一緒だ。この人たちもちょっと近所から、ではなくて遠くへのお出掛けなのかも知れない。
 列車がどこかの駅に停まる。メーモ、と名前が記されている。動かないなぁと思い思い切って席を立つ。どうやらすれ違うのようだ。外に出てみる。
 
 改めて先頭車両。なんてことない気動車。メークロン線でみたようなプラスチック製の椅子ではないので、長い事座る事は一応は考慮されているようだ。同じような車両が3両つならるのが普通407列車。
 
 最後尾には鉄道警察が数人、にこやかに談笑している。ドアが開けっ放しなのは、風通しをよくするためか。乗客はほぼほぼタイの地元の人だが、数人は外国人の姿も見受けられる。改めて先頭に戻ると、
 
 こんな乗客の姿。売り物では無くてペット。同じ車両に乗っていて今まで気づかないぐらいだから、ずっと大人しくしていたのだろう。
 
 先程の売れ残りがデッキに佇んでいる。どこまで連れてゆかれるのだろうか。
 こんな様子を見ていると、汽笛が聞こえた。
 
 チェンマイからの普通408列車、ナコーンサワンゆき。今乗っている407列車と対になる列車だ。同じく気動車3両編成で席がほぼ埋まる程度には乗っている。タブレットの交換が行われて、まずは408列車が出発。ついで407列車も出発となる。
列車は山を下りだして盆地に差し掛かる。明らかに大きな街が現れる。
 
 銀色のタンク車が屯している。シラアットに有ったような廃車体ではなく現役の貨車だ。そして
 
 ナコーンラムパーンに到着。久しぶりに屋根のある大きな駅だ。ここでたくさんのお客さんが降りてゆく。その代りに乗り込むお客さんも多いけど、ボックス4人は解消された。窮屈だった車内に少しだけ余裕ができる。
 そういえば初めて駅名に漢字が添えられるようになった。タイの北側は中国と国境を接している。華僑の割合が少し大きくなってきたのだろう。
 今日すれ違うべき列車とは全てすれ違っているから、お客さんの乗り降りが済んで、タブレットの授受が終わったら発車となる。速度が上がると車窓には
 
 豊かさの源、水田が現れる。水を満々に湛えた水田。これから二期作目か、三期作目か。
 盆地を抜けると三度目の峠越えになった。今度は山が深くなる。
 
 人煙稀な山岳地帯。列車はゆっくりゆっくりと峠に向かって上り詰めてゆく。時折現れる駅での乗り降りは無く、それでも列車は律儀に歩みを止め、そしてまた山へと入り込んでゆく。そして、さすがに無理、となったのかトンネルへ。今回のトンネルは長い。後で調べたらタイで一番長いトンネルだそうだ。トンネルを走る間に音が変わり、そして抜ける。
 
 トンネルを抜けたところが駅である。クンターン駅。時刻表に出てくる数少ない駅だ。40分程遅れているようだが、それはどうでもよい。ここは自然公園の入口になっているようだ。数少ない貴重な列車と知ってか知らずかこちらにカメラを向ける人もちらほら。
 列車は下り坂を転がるように駆け下りてゆく。チェンマイまではあと70㎞程あって1時間で着く距離ではないが、だいぶ先が見えて着た感がある。
 
 山と言うよりは高原、という風情な景色の中を列車は進む。日本にこんな鉄道が合ったら人気の観光路線になるだろうなあと思える安楽さがある。青空ならもっといいだろうが、タイで青空になったら、酷暑だろう。理想の高原鉄道というのもなかなか難しい。
 
 高原を緩やかに転がって行くと車窓に水田が現れる。これは街の証拠だ。そして停まったのがラムプーン。チェンマイまであと30㎞という所だ。乗り降り少々。列車はすぐに発車する。ずっと山中だったが、ここはチェンマイまで続く盆地。人家が点在し鉄道に並行して道路も見える。
 
 乗合ソンテウの姿も見える。盆地を快走する列車はソンテウを追い抜いてなお駆ける。
 最後の停車駅、サーラピーを出ると車内は降り支度をする人で騒々しくなる。荷物の大きな人が多くて、荷棚が満載。それを慌ただしく降ろしたり荷造りしたりと。そして列車はチェンマイの構内へ。紫に装いを変えた、ブルートレインが佇む隣りに足を止める。定刻に遅れる事40分、15:30近くになっているが、それはどうでもよい。
 大きな荷物をもった乗客が二つのドアに殺到する。ゆっくりと降りる事、先頭車両は
 
 すでにブラシを掛けられている。
 インドシナ半島シンガポールのウッドランドから延々続く鉄の道、北側の終着点、チェンマイ
 
 407列車の先はあっさりとした車止めだけど、
 
 これから発車する14列車の停まる先は、いつぞやの国王だろうか、肖像画がある。物理的な車止めにはなりえないが、精神的には十分に役に立つのだろうと想像はつく。
 ちょうど急行52列車、バンコク行きが出発をするところであり、ついで17時に特急14列車、18時に特急2列車と、バンコクへ向かう夜行列車の出発ラッシュに当たるこの時間のチェンマイ。このまま引き返すと明日の朝、バンコクに到着し、さらに他の路線へということが出来るが、さすがにきついので1日をチェンマイに宛がう。日本からやって来たブルートレーンの個室寝台車は明日乗る事にして、今日はチェンマイの街に出る。
 
 時計塔が目立つチェンマイの駅。
 
 保存蒸機が佇むのはタイの主要駅ではお馴染みの景色だ。鉄道が鉄道員に愛されている証拠かも知れない。
 さて、今日は市街地に出る。チェンマイの鉄道駅から市街地へは2㎞程距離がある。歩いて歩けない距離ではないが、荷物と歩道事情を考えるとクルマ移動が正解。いくつか赤いソンテウが停まっている。ガイドブックによると赤ソンテウはチャーター便。黄ソンテウは路線便らしいが、黄色のソンテウは見当たらない。
 今ちょうど出発するところのソンテウを捕まえて、ターナー門に行きたいというと、50バーツだと仰る。ちょっと高いと思うのが、相場も分からないので取りあえず乗る。先客はカップル二組。そこに混ぜて貰って、チェンマイの旧市街の方へ。駅からの通りも十分街中であり、泊まるところもあるみたいだけど、観光地というか見どころは旧市街の方が多い。
 
 10分程でターナー門へ運ばれる。今日はホテルではなくゲストハウスを予約している。ターナー門から来た道をちょっと戻って路地へ。目指すゲストハウスにたどり着く。眠ったような気だるい雰囲気の中でチェックイン。部屋に荷物を置く。さすがに狭い。ゲストハウスの宿泊は2008年、家族で行ったスコータイでの宿泊以来。あの時は結構広い部屋で雰囲気も良く、ゲストハウスいいぞ、と思ったのだけど、街中のゲストハウスだと、そうはいかないか。まぁ一泊1,500円ぐらいだから仕方ない所ではある。
 部屋に籠る感じではなかったので、出かける。昼食がバミー少々でさすがに空腹を感じている。チェンマイの名物、カオソーイを食べようとガイドブックに出ている店を目指してみた。
 傘を持たずに出たのだが、間もなく降り出す。そして本降り。しばらく歩けずに雨宿りとなる。長く降り続くと辛い所だが、タイのスコールは長くは続く無い事を知っている。案の定、直に小ぶりになった。
 目指す店はイスラム寺院の隣。地図を持って行かなかったが、イスラムの祈りの音が聞こえてきたから場所が分かる。
 
 間もなく店が現れる。予備知識がなければ絶対に入らないような店構え。
 
 営業は17時までだそうで閑古鳥が啼いていたが、注文は受けて貰える。ビーフorチキンという選択肢。カオソーイ・イスラムという名前通りにハラルな店に違いない。
 
 
 まもなく供されたカオソーイは確か40バーツだったか。一緒に出てきた漬物は単独で食べてしまったが好みにより中に入れるらしい。もうちょっと熱々だったら感想が違ったかもなとは思うが、まずはタイ北部の名物料理をやっつけた事になる。
 一旦部屋に戻って折り畳み傘を持つ。今度は先程ソンテウを降りたターナー門とその先、旧市街の方に行ってみる。
 
 
 日曜日はターナー門とその先の通り、マーケットが出来ている。外国人観光客で賑やかなマーケットをぶらぶらと。一番多いのが欧州からと思われる白人。ついで中国人の団体客が目立つだろうか。ちょっとした小物、衣類、そんな感じのものが並ぶマーケットをぶらぶら。途中、
 
 仏教寺院もあって参拝客もちらほらいたけど、お寺の境内もマーケットに飲み込まれている。賑々しい事のこの上ないが買い物をする気にはならないので、ぷらっと一周して部屋に戻る。そろそろ夕方の6時。
 食事と軽く飲み、のつもりで薄暗くなってからもう一度街に出てみる。今度は新市街の方にあるナイトマーケットの方へと足を向けてみた。
 
 この界隈。外国人向けのちょっとしたホテルやゲストハウスが点在しているようで落ち着いた空気が流れている。これから向かうナイトマーケットには近道だけど、暗くなると物騒なのかなとも思わなくはない。
 大通りに出るとマッサージの店が点在。バンコクよりも値段は安いようで、思い立って入ってみる。8月1日、2日と乗り詰めであり、そろそろ腰やらお尻が痛くなる頃である。タイ式マッサージ1時間200バーツ。日本でマッサージは敷居が高いけど、外国に行くと値段も手ごろなのでまぁ良いかと気楽に入る。1時間程揉まれた訳だが、時々言われる英語らしきものの意味が分からず困惑。何かと思ったら「OK feal」、つまり気持ち良いか?と聞かれていたのだった。意味が分かるとまぁ納得だが、痛いけどもう少しとか、ややこしい返し方は出来ないので、goodとかそのぐらいにしておく。
 マッサージを受けるとすっかり暗くなっている。もう少し歩くとナイトマーケットが点在するエリア。
 
 夕方歩いたターナー門あたりの旧市街に比べると人出は少なく落ち着いている。売っているものは衣類がメインでちょっとした小物やインテリアになりそうなものなんかも。場所によっては食事ができる場所やら酒が飲めて生演奏している所もあって、楽しみ方はそれぞれ。
 軽く夕食にしてみる。夕食と言ってもまずは
 
 ビール。ビアチャンを頂く。食事の方は写真から指さしで選んだはずが、
 
 思ったものと別の物が運ばれてきた。まあここはタイだから仕方ないし、まぁいいや。出来立ての熱々は旨かったがテーブルにタイの四大調味料が無かったところだけが減点。そういえばカオソーイの店にも無かったし、タイ北部はナンプラーだの砂糖が無いのがデフォルトなのかとも思う。
 バンドの生演奏が行われている反対側でおかまちゃんの集団がダンスをしているようなカオスなナイトマーケットを後に泊まっているゲストハウスの方へとぶらぶら。途中、バーが集中しているエリアがったのでちょっと寄り道。
 
 何だかんだとビールばっかりのんでいるような。ムエタイのリングがあってイベントをやっているそうだが、今日は結構ちゃんとした試合をするらしくリングは目隠しされる。中に入るには入場料がいるのだそうだ。バンコクで見るよりは安いのだろうが、お金を払ってまで見る程の興味は無いので、ビールだけ飲んで退散する。
 ゲストハウスに戻って少々恥辱。ネットはつながるはずなのだが、あんまり電波が良くなくアップは諦める。