高鐡で台湾縦断

 列車は12時ちょうど台北車站を発車した。左営まですべての駅に停まるパターンの列車だ。車内、半分ぐらいの乗車率。2人掛けの方に二人組が目立つ一方、3人掛けの方は少々乗客が少ない。
 列車は地下線をゆき台北のすぐ隣、板橋に早速停車。少々お客さんを集めると発車。しばらくすると地上に出て速度が上がる。車窓には街と田園が混ざり合っていて、どこか日本を思わせるような雰囲気。座り心地もやはり東海道新幹線そのもので、どこか日本を旅しているような、そんな錯覚を感じる。
 列車は桃園に到着。空港からほど近い駅で、ここでも乗って来る人の方が目立つ。ただ空港へ向かうお客さんも多少は居たはずだ。自分も5年前、台北から桃園までのわずかな距離だけ高鐡には乗車済みである。
 5年前には無かったように記憶している駅前のマンション群を眺めて列車は動く。ここから先は未乗区間。心して構えると列車は速度をどんどん上げてゆく。

 少し緑が濃くなる。人家の少ない所を選んで走っているのだろう。桃園も市街地とは関係ない所に駅があったが、その次の停車駅、新竹も郊外の外れ、本当に外れの方に駅がある。新竹では降りるお客さんの方が目立ち始める。
 台北から小一時間。速度が緩む。車窓の景色、遠くにビルが目立つ中、到着したのは台中の駅。ここで下車する。

 高鐡の駅名は台中を名乗るが、ここは台中市郊外。台中の市街地へはバスか台鐵による連絡となる。台鐡の駅名は新鳥日。台鐵にとって台中はあくまで旧市街地の駅なのだろう。
 台中まで普通列車で移動する。台鐡の種別では区間車というようだが、に乗る。乗車券は自動券売機で日本の姿かたちそのままのものが出てくる。台中まではNTD15。

 やって来たのは気動車4両編成。二つドアロングシート車で車内は立客が出る程度に混んでいる。そこに高鐡から乗り継ぎの、荷物の大きなお客さんがちらちら乗って、そこそこに詰まる。
 日本製らしい気動車は快調に走り、10分少々で終着の台中に到着する。新幹線の車窓から遠目に見えた台中は高層ビルが何棟も建っていたが、列車で運ばれた台中駅前は低い建物が並ぶ、一昔前の日本の小都市という風情。

 日本施政時の駅舎だろうか。古めかしいが大事に使われている感じが伝わってくるような駅がそこにはあった。
 キャリーバックが重いので手荷物預かり所で預かってもらう。駅舎の外れにある薄暗いエリアがある。荷物輸送の窓口のようだ。ケースの中でピヨピヨ鳴き声がしてヒヨコがびっしりと入れられている。どこまで行くのか知らないけれど。
 荷物の預かり料は大きさ重さに関わらず、1個50NTDらしい。荷物を預けると代わりに引換証をくれた。

 幾つもスタンプが捺され、手間の掛かる引換証を無くさないように鞄の中にしまう。身軽になって街に出る。

 低い建物が多く、空が大きく感じる台中での目的地は二つ。妻の強い要望で向かうのはどちらも駅から割と近い所。道さえ間違えなければものの5分で到着する。

 クラシカルな建物には長い行列が出来ている。

 看板には赤十字と宮原眼科の文字。日本語をそのままで受け取ると宮原眼科という医院になるのだが、もちろん、そんな訳はない。そしてもう一つ「冰淇淋」という文字。これは日本には無い文字で意味は分かりかねる。
 正体は「宮原眼科」という名前のアイスクリーム屋なのである。日本統治下の時代、ここには宮原眼科という眼科医が開業をしていた。その建物が中華民国の時代になって台中市の衛生局となって使われ、その建物を改装して出来たのが今の宮原眼科というアイスクリーム屋さん。眼科の建物なのでマークには赤十字。そして真ん中の梅の花は日本という国の象徴であるらしい。
 アイスクリームだけでなく色々な菓子も扱っているのだが、まずはアイスクリームの行列に並ぶ。サービスの飲み物を貰ったりして待つことしばし。順番が来て

 こんな大盛りのアイスが出来上がる事になる。アイスは三玉。それにトッピングとして3種類、菓子が乗る。一つ一つが確かに美味しく、奇をてらっているだけではないのが良く分かる。行列にも納得する事になる。これだとお昼のお弁当、いらなかったかも知れない。
 後ほど、お土産用のパイナップルケーキを物色する事にして、もう一つの目的地に足を伸ばす。その途中にこんな看板を見かけた。

 「れいこのど自慢会」って何だ。。。。。。
 ぶっ飛んだ日本語看板って海外ではお馴染みなのだが、ぶっ飛び方部門と何があるのか想像付かない部門で堂々第一位ではなかろうかと思う。
 もう少し街を歩くと目的の店に到着。

 「三明治」と書かれているがこれはサンドイッチの事。香港だと「三文治」と表記したと思う。台中は普通語で香港は広東語の?表記だと思うが、とにかくこことはサンドイッチが名物のパン屋さん。地元の人がメインなので先程の宮原眼科のような大行列は無いものの、それなりに賑わっている。
 お持ち帰りして後日食べる事にして、幾つか選んでお買い上げ。再び謎ののど自慢会の前を通って、宮原眼科に戻る。今度はアイスクリームの行列ではなく、菓子の販売店へ。図書室を模して並ぶ書棚の中にサンプルの菓子が並んでいる。なかなか雰囲気が良い。台湾の文化も洗練されているなぁと感心する。
 お土産用にパイナップルケーキを買い求めて駅に戻る。案外と時間が経っていて、もう15時過ぎ。先程預けた荷物を回収する。そして南下すべく高鐡の台中駅へ移動する。

 台中の駅構内。向こうに停まるのは台中始発、高雄経由で台東まで向かう?光号。客車列車が出発を待っている。
 高鐵乗換の新鳥日は高雄方面へ3駅なのだが、なぜか台北方面と勘違いしてしまい、本来乗るべき区間車を逃してしまう。次の区間車が来るまで30分弱を台中のホームで過ごす。

 台北方面へ自強が走って行く。全車指定席だが、自願無座、日本的にいうと立席の人を多数乗せてゆく。郊外の高鐡駅まで行って高い高鐵に乗るよりは安い台鐡を選ぶお客さんも多いようだ。

 こちらは区間車。台中に来るときに乗ったのは気動車だったが、行きかう区間車は全て電車、そしてロングシート


 そして30分近く待ってやってきた電車に乗り込む。4両編成の電車は結構混雑している。新鳥日までの3駅を立って過ごす事になる。
 高鐡台中駅に到着すると16時近くになっていた。次の高鐡、左営行きは16:22。指定席は3列席の真ん中通路側と並んだ席になる。先程乗った昼間に比べると混んでいるのかも知れない。
 一本、台中止まりの電車がやって来たあと、


 やって来たのは211次列車。黄色い新幹線みたいな風情でやって来る。乗ってみるとアニメ専門チャンネルのラッピング列車。車内もヘッドレストのカバーや荷棚にラッピングがされているから、飛行機のスペシャルマーキングに近い雰囲気である。そしてよく見るとテーブルにカップホルダーが追加されていたり、車内の案内が自車の前後3両分にする代わりに文字が大きくなっていたりすることに気付く。どうやら最近導入された新造車のようだ。
 台中を出た高鐡、田園地帯に人家が混ざるエリアを高速で南下してゆく。まるで東海道新幹線に乗っているような錯覚を覚える。

 景色が本当に日本的というか、そんな感じなのである。
 列車はどうやら高速タイプのようで通過駅を織り交ぜながら台湾を南下してゆく。冴えない天気が残念だが途中、台南の手前で北回帰線を超えた筈だ。
 速度が緩んで終着の左営に到着。台中からノンストップで44分で到着。左営とは耳になじまない地名だが、ここは台湾第二の都市、高雄。その高鐡高雄駅ともいうべき駅が左営である。高雄の北側にあたり、ここからは台鐡か地下鉄で高雄市内に向かいう事になる。

 到着はほぼ定時であった。高鐡の専用線でほかの列車には影響を受けないし、ダイヤも1時間に4本程度と余裕がある事も影響しているのだろうが、台湾高鐡、定時性に関しては優秀である。

 今日は高雄宿泊。地下鉄で予約したホテルに向かう。高雄には紅線、橙線、二つの地下鉄が開通している。左営に乗り入れているのは紅線の方。
 地下鉄の出札口で高雄のICカードを購入。台北ICカードは高雄の地下鉄では使えないそうで、その注意書きが改札機には掲げられている。九州程度の大きさの台湾島、その北と南でICカードが違うのは少々不便。しかも、共通で使えないのは地下鉄だけで、高雄のバスやコンビニでは台北ICカードが使える。そのうち地下鉄も共通利用が始まるのかも知れないが、今は二枚持ちと言う事になる。
 紅線で高雄市内に向かう。金曜日の夕方。帰宅ラッシュに差し掛かっているようで、車内は混んでいる。会社員が帰るには少々早い時間なのか高校生らしいグループが目立つ。台鉄の高雄車站を過ぎて、電車は橙線との結節点、美麗島駅に到着。ここで乗換。一駅だけ橙線に乗るとホテルの最寄り駅となる。
 乗換含めて30分弱でホテルの最寄りに到着。地上にあがるとこちらも帰宅ラッシュの真っただ中であった。

 交差点、信号が青になると一斉にスクーターが走り出す。一人乗り二人乗り、何十台ものスクーターが走る様子に台湾の日常を実感する事になった。
 駅から数分で今日のホテル。ちょっと変わったホテルで1,2階にはゲームセンターがあり、ホテルは3階から上らしい。チェックインを済ませて部屋に落ち着くと18時を過ぎている。そろそろ暗くなってくる頃。
 荷物を仕舞いこんでいるうちに夜になる。今日はこの後、夜市に足を伸ばす。ホテルから少々歩いたところに六合観光夜市という夜市がある。観光がつくぐらいなのでどちらかというと観光客向け、入門者向けなのだそうだが、ホテルから本当に近いので今日はこちらに。

 夜市会場、手前の通りには次々とバスがやってきて団体客を降ろしてゆく。大半は大陸のお客さんらしい。その人たちに混じらないように夜市の中に進む。

 それなりに広い道路だが、両脇に屋台が並び、真ん中にはテーブル。その間を行きかうお客さんが溢れて賑々しい事、甚だしい。まずは妻のお目当て、パパイヤ牛乳の屋台を探す。有名な屋台らしく、紛い物もいくつかあってややこしいが、

目的の店は地下鉄の美麗島駅に近い、いわば一等地というべきところにあった。お目当てを手に入れたのち、改めて夜市をぶらぶら。今度は目的がないから気になったものを適当に、と言う事になる。

 担仔麺の屋台があって気になったので寄ってみる。屋台と言っても麺を食べ歩くわけにはいかないから、屋台の裏にテーブル席が幾つもあって、そちら召し上がる形式。

 間もなく出てきた担通麺。台南の名物だそうだ。一緒に頼んだ煮玉子と比べてば分かるけど小ぶりのお椀、味噌汁椀ぐらいの大きさだろうか、に盛られた本当に小ぶりな麺。これでNTD20だったか。美味しいけど何せこの量、するっとお腹に吸い込まれてどこかに消えてしまう。
 さあ、次の店と思って適当にぷらぷらと。歩いているうちに

 たこ焼きみたいな屋台にぶち当たる。中に入っているのは卵の黄身と海老という不思議な組み合わせ。面白そうなので一つ買ってみる。これはホテルに持ち帰って部屋で頂こう。

 買い求めるとなぜかパイナップルをまぶされてしまう。郷に入らば郷に従えではあるが、パイナップルかぁ。


 こちらは牡蠣を包んだ揚げ饅頭、といでも言えば良いのか。rの付くシーズンではないけれど、ついついお一つお買い上げ。
 こんな調子でいくつか品を買い求めて六合夜市を後にする。コンビニでビールを買い求めてホテルに戻る。そして先程買い求めた物たちをぱくつく。えっと思ったパイナップルをまぶしたたこ焼き的な物も食べてみるとまぁまぁ美味しかった。