ゴトゴトとリズミカルな車輪の音で目が覚めた。久しぶりに迎える夜行列車の朝。
 カーテンを開けるとようやく夜の明けてきた街が見えている。外はどうやら白いものを被っている。雪国、青森を発ちまもなく12時間に鳴ろうとしている所。トンネルを抜け、かかあ天下と空っ風の上州を通り過ぎ、武蔵の国に差し掛かっているが、そこも雪国だった。
 「皆様おはようございます。只今は2月8日6:20でございます」
 車内放送が始まる。大宮到着15分前の放送。外は少しずつ明るくなってゆく。そして白い雪が絶え間なく舞い散っている。
 大宮に到着。ホームの中ほどには撮り鉄の姿は見えない。上野行きの電車を待つお客さんも、自分の乗れない列車に対しては関心を示さない。個室から見ているだけでは極めて乾いた土曜日の大宮駅である。
 列車は最後の区間に足を踏み入れる。時刻は6:40過ぎ。少々遅れたままの最終コースとなる。少しずつ外は明るくなり、そして雪に隠されてゆく。赤羽のホームを通過。先端には撮り鉄が数人。雪景色のあけぼのは撮り鉄への格好のプレゼントか。

雪化粧した尾久がゆっくりと流れてゆく。最終コースの本当に最後。鶯谷のホームにはこちらの撮ろうとする、たくさんの人たち。
 7時を少々過ぎて、上野駅、地上ホームへと吸い込まれてゆく。天井に常磐線ホームが被さる13番線が最終目的地。


 12時間雪と戦い続けたあけぼのの蒼い車体にはあちこちに雪がまとわりついている。東北の雪道で纏ったしっかりとした雪に、関東で浴びた湿った雪。屋根の下に入り込み、ようやく安堵の色を浮かべているようだ。

 先頭の機関車側に回り込んでみる。

 幾重の人に取り囲まれたその先にいるのはEF64-1031。上越線の主が途中、長岡からエスコートしてくれている。

 記念撮影の真っ最中。機関車がお目当ての大きなお友達がたくさんいるが、怒号が出る事もなく、大人しく成り行きをみている。

 長いこと停まっていたから待っている間に前に出られた。ここまでの雪道で文字通り先頭に立って頑張ってきた電気機関車EF64に労いの連写を。

 15分程であけぼのは尾久の基地へと引き上げる。繰り返されてきたこの景色。あと1ヶ月ほどで過去の物になってしまうのは、本当に惜しい。
 上野駅地上ホームを後に、山手線に乗り込む。雪降る東京、普段と逆方向へ回り込み25分。新宿の駅に到着。