朝5時に無理に目を覚ました。9月20日の金曜日。外はまだ暗い。
 身支度をして出かける。外は寒いが直に暑いほどの天気になるはずだ。この時期の格好は何時もの事ではあるが難しい。
 豊橋にでると7時過ぎ。案内には

 飯田線不通の文字。週明けの台風で直撃を喰らった飯田線。結構な重傷のようで全治3ヶ月らしい。全国のニュースには全くならないから、今の今まで知らなかった。

 今日は飯田線ではなく、東海道線に乗る。静岡行きの普通列車は通勤客でさらりと立つ人が出る程度の混雑。乗り換えがギリギリで座れないが、今日はあまり差し支えない。立って二駅、新所原で今日は降りる。
 いったん改札を出る。どこか大きい工場の通勤バスがいて通勤客が目立つ中、逆らうように向かうのは隣の駅舎。天竜浜名湖鉄道新所原駅。今日はここから東へ、東海道線東海道新幹線ではなくて、天竜浜名湖鉄道で向かってみようと思う。次の列車は掛川行き。ちょうど列車が着いたところで改札口からお客さんが出てくる。こちらは掛川まで、1280円という乗車券を買い求めて、改札をくぐる。

 ホームにいるのは1両編成のディーゼルカー。前にこの路線に乗った時に、もう15年も前だが、走っていたレールバスはすでに引退していて、鉄道車両という体のディーゼルカーが活躍している。平日のラッシュ時だが、列車は1両編成。セミクロスの座席には十数人が発車を待っている程度。ラッシュとは縁のない方へ向かう列車からかもしれないが、朝の時間としては少々寂しい乗り具合である。
 そのお客さんがぱらぱらと降りてゆく。何だろうかと思っていると東海道線の下り普通列車が入ってくる。列車が来るまで降りずに待っている人がいるのだった。何だかずいぶんと田舎臭い感じがする。

 そのかわりに乗ってくる人もいたから、やはり十数人のお客さんで列車は発車する。東海道線とぷいっと分かれると単線の細道。元々、東海道線が不通になった時のための代替路線として敷かれた路線。そこに何があるわけではないから、景色はうんと鄙びてくる。

 みかん畑が広がったりして。反対側にはちらちら浜名湖が姿を現す。東海道線、新幹線から見える浜名湖はあっという間に消えてしまうが、天竜浜名湖鉄道浜名湖は名前になっている通り、何時までも続く。最初は逆光の中で光っていたが、沿線では大きな街、三ヶ日で高校生を降ろすと、入江に忠実に沿って走るから日が反対側に行って

 順光になった。実に変化に富んだ路線だが、この時点ですでに30分が経っている。先程の静岡ゆきならすでに浜松を過ぎ、天竜川を渡っている。新幹線に乗ったら、もう静岡を過ぎているかな。
 車内は多少空いたが、まだ高校生が、そして少々ではあるが通勤客も乗っている。浜名湖の入江が現れたり消えたり、

 浜名湖が現れたと思ったら思い切り高速道路が貫いていたり。この辺りは東名高速浜名湖サービスエリアになる。東名高速バスにはさんざんお世話になっているから景色を奪うなとはとても言えた立場ではないけど、ずいぶんとした事をやったものだとは思う。
 次のお客さんは気賀と気賀高校前で降りてゆく。これでがら空き。時刻は8時半になろうかというところ。もうささやかなラッシュはおしまいかなと思ったら、

金指で下り列車を待ち合わせている間に小学生の団体が大挙して乗り込んでくる。列車は一気に騒々しくなる。

 沿線から浜名湖が離れてゆくと刈り取り前の田圃が広がる日本らしい光景となる。そしてちょっと山がちになってトンネルに入る。ちょっとした峠越えのような雰囲気。その車窓に似つかわしくない大きな高架道路は新東名のようだ。新東名と聞くとずいぶん山奥に入った気がするが、この辺り、新東名の浜松サービスエリアが近いようだ。
 浜松の市街地方面、遠州鉄道乗換となる西鹿島の駅で小学生の団体が降りてゆく。代わりに乗ってくる人はいないのでがら空きとなって東へ向かうことになる。

 天竜浜名湖鉄道の社名にもなっている天竜川を渡る。新幹線で渡る天竜川と、水量は変わらずに流れが狭まっているから別人のような引き締まった感があって好ましい景色。しかし浜名湖と違って一瞬の逢瀬である。列車はさらに東へ向かう。

 時代掛かった天竜二俣の駅を過ぎると天竜浜名湖鉄道の旅も後半戦。再び新東名の立派な高架を潜ると車窓の丘陵には茶畑が広がる。今度の丘は右に左にカーブして避けるように走る。茶を作るのは丘陵地だけのようで平地が広がると田圃となる。
 先ほどは空いていた車内。小さな駅で一人乗り二人乗り、あるいはキャリーバックを持った人が乗ってきたり、少しずつお客さんが増えてゆく。この二時間、結構いろんな人たちが使っているのだという事が分かったところで、右側から立派な線路が現れた。二時間前にお別れした東海道線である。

いつの間にか30人ぐらいに膨らんだお客さんと共にホームに降り立つ。
 町へと散ってゆく人、JRのホームに向かう人、色々といる中、自分は更に東に向かうべく、東海道線のホームへ向かう。乗り換え時間は少々。その間に朝食を何とかしたい。朝6時前に家を出てから4時間が経っている。掛川の駅、新幹線側に行けば色々あるのは知っているが、在来線側には売店ぐらいしかない。

適当なものを買ってホームのベンチに座り、お腹にあてがっておく。まもなく列車がやってくる。
 乗ったのは興津ゆき。東海道線の静岡付近、昼間の列車は分断されていて、どこかで後の列車に乗り継がねばならない。今日は藤枝で降りる。掛川から藤枝まではスイカで。ここから先は戸塚までの乗車券を買い求める。いわゆる分割購入の一種。掛川から戸塚は200km以内だが、横浜まで行くと200kmを越えてしまうので横浜市内扱いとなって運賃が高くなる。それを分割する事で戸塚までという切符にしておいた。掛川で買うと3570円なのだが、分割する480円と2520円、全部で3000円となる。分割購入で一食分浮くのはびっくりである。
 改めて乗り込んだのは三島行き。昼間の時間帯、静岡から熱海までまっすぐ行くのも至難で、三島か沼津で乗り換えを強いられる。乗り換えの度に10分、10分と時間のロスが積み重なる。意地悪としか思えないダイヤになっている。
 6両で来た三島行き。静岡で後ろ3両を切り離し身軽な編成になる。お客さんは多少立客がいる程度。清水を過ぎても案外と空かない。立ったままの人を残したまま薩多峠を越えてゆく。

 今日は久しぶりに富士山が見える。誰も感心を示さないのはみんな地元客だからだろうが、夏が過ぎ去り秋になったことを感じる景色ではある。徐々に過ぎてゆく富士山を何枚か撮っていると数駅が過ぎる。三島には12時近くの到着。ここで乗り換え。後の電車は沼津始発の熱海行き。10分後に来るのだが、これで行っても熱海の接続がよくない。30分後の熱海行きでも結果は一緒なので三島で昼食を済ませようと思う。
 30分あれば外に出ても食べることは出来る。改札を出てどこかと思ったが、そうなると30分は少々短い。そもそも駅前に出た時点で残り時間は30分を割り込んでいる。
 仕方ないので伊豆箱根鉄道三島駅構内にある駅そばに行ってみる。ここはJR構内の桃中軒とは別の経営らしい。どうやら伊豆箱根鉄道自身がやっている店のようだ。


 駅そばグランプリ1位の看板。駅そばグランプリというのは初耳だが富士運輸区の社内報で等と書いているから、ごくごく内輪の投票らしい。投票対象がどれほどあったのか気に掛かる。

 そばは天そばにした。¥420。まぁまぁだが、桃中軒のそれは¥320だから、こちらの方が美味しくて当然ではある。もう少し大きなグランプリがあったなら、どうだったでしょうね。

 30分の時間を少々持て余して、熱海行きに乗車。熱海では4分の待ち合わせで東京行きとなる。このまま戸塚に着くと14時過ぎだろうか。まだまだ時間はある。もう少し寄り道をしようかと小田原で列車を降りる。今度乗ってみるのは箱根登山鉄道。横浜に住んでいても箱根にゆく機会はなかなか無いので、20年ぐらいはご無沙汰している路線である。今日は強羅まで足を延ばそうかと思う。
 箱根湯本までは小田急の電車に揺られる。湯本まででも結構な登り坂である。足元を軋ませながら、下り電車はゆっくり登ってゆく。


 強羅行きは箱根湯本が始発。やってきたのは新しい方の電車だった。小さい3両の電車は観光客で満員。そういえば3連休を控えた週末だったということに気付くのだが、実際には半分ぐらいは外国人観光客だったようだ。日本の連休はあまり関係なかったか。
 新宿からのロマンスカーが到着して、またお客さんが増える。そして出発。発車して早々、とんでもない山道に差し掛かる。

 目で見て分かるほどの急坂をゆっくりと登る。深い谷を跨ぎ、トンネルの先は急カーブ。谷をぐるっと回り込み、進みきれなくなるとスイッチバックで後ろへ進む。20年ぶりに乗る登山電車はなかなか面白い。これほど楽しい電車だったかと再認識する事になる。地元から1時間少々で来れる所なのに、ずいぶんと楽しい。
 10km少々の道のりを40分ほど掛けて強羅に到着。ここから芦ノ湖方面へはケーブルカーに乗り換えとなる。今日はここで折り返し。先程乗ってきた電車の発車を見送り、次の電車を迎える。今度は2両編成の旧型車両。今度はこれに乗って箱根湯本に戻る事にする。


 線路際で写真を撮ってからホームに向かったら

座れない程度の混雑ぶり。昭和31年製という電車に揺られて箱根を下る。立っている分だけ自由が利くからスイッチバックの待ち合わせで

 こんな写真を撮ったりできるのはありがたい。

 二度三度、行ったり来たりを繰り返して箱根湯本まで40分の小さな旅。小田原からでも2時間少々で往復¥1,300だから映画を一本見たようなものである。今度は冬、雪の降ったときに来てみようかと思う。
 後は東海道線を戸塚までまっすぐ小一時間。17時前には戸塚に着く。地下鉄で自宅までは20分だけど時間があるから

 戸塚からバスにしてみた。横浜駅まで直行するバスは頻発していて待たずに乗れる。座席が埋まりきる程の混雑だが、さすがに乗り通す人はいないから弘明寺に差し掛かるあたりまでで殆どの人は降りる。代わりに乗る人もいるが、車内は空席が目立つようになった。吉野町まで40分ほど。
 金曜日の夕方早々に横浜の自宅へ。妻は勤め先の飲み会があるそうで、帰るのが遅い。早々に飲み始めると自分用の夕食を作るのもなんか面倒になり、適当に済ませる事になる。