朝、5時過ぎに無理やり目を覚ましたが、う〜ん、動けない。動けないなぁと思っている間に時間が過ぎていって乗ろうかと思っていた列車には間に合わなくなった。
 今日は休暇を貰っている。夕方までに横浜に着けばいいと思っているので、制約が無いといったら無いのだけど、中央線経由で移動したいと思っている。ただ中央線廻り、特に普通列車で移動しようとする色々と制約があり、つまり早起きしなくてはならないのだった。
 さて、どうしようかなと思う。次の電車でも間に合わなくは無いが、乗り継ぎ時間が短く切符を買えない。18きっぷの期間ではないので正規の乗車券を買わねばならず、従ってそれなりに余裕が必要である。
 中央線、中津川から先に行く普通列車、7:40のあとは10:10まで開く。10時の列車でもまぁ良いのだけど、そうなると今この時間に起きている意味、あまり無い。
 中津川まででどこか寄り道をしようかとも思ったが、例えば中津川の手前、恵那から分かれる明智鉄道あたりに寄るとしても、どうも接続が良くなく、結局今すぐ出掛けないと行けないと言うことになる。何か判断が出来ないまましばらくぼんやり。結局中津川10:10に余裕を持って間に合うようにと適当に出掛けることにした。
 最寄り駅から電車で高蔵寺。朝8時過ぎの駅は通勤通学客で混雑している。今日は正札の切符を買わねばならない。若干憂鬱である。窓口に行き、「中央線で塩尻、辰野経由で東京、そこから横浜市内まで」というと「乗車券だけでいいですか?」と言いつつ、まぁ普通に出してくれる。ありがとうございますの一言は無かったけど。18きっぷって良いよねぇと思う。どんな厄介なルートでも「18きっぷ一冊」っていえば乗れるのだから。

 改札前のパン屋さんで慌しく朝食を食べるとホームに戻る。先程購入した乗車券を改札に通すと

 多治見行きの普通列車に乗る。8両繋いだ列車はがら空き。名古屋に通勤客を運んだ戻りのようだ。
 空は青く山も蒼く夏のような車窓が広がる。入梅してから二週間少々経っているが殆ど雨が無い。そういえば昨日のニュースだったか、水不足なんて話題を告げていた。
 本格的に夏になるとボイラーのようになる多治見の駅に降ろされる。今日はまだ過ごしやすい。後から来る快速を待つことになる。

 今度もラッシュの折り返し。10両繋いでいるがもてあまし気味。後ろの方が313系で転換クロスシートに座って夏の田舎、という風情の景色が流れてゆくのを横目に、今日は少し資格の勉強を進めておく。これなら東海道線経由でも良かったのか、という気もしなくは無い。
 リニア誘致の看板が目立つようになると中津川に到着。まだ9時半。ここから先は少々待ち時間がある。待合室で引き続き、テキストを読みつつ待つことになる。こんな時間の方が集中出来てよい。
 特急の発着を見送ったあと、ホームには30人ぐらいのお客さんが残る。そして松本行きの普通列車が入ってくる。

 JR東持ちの運用で3両編成。車内は軽く埋まる程度の乗車。もう一本、名古屋からの快速列車受けたがさほどお客さんは増えない。
 列車は定刻に発車すると木曽路の谷へと分け入る。

 窓が薄汚れているのが残念だが、その向こうには細く深い木曽川の谷。道路が見えたり、消えたりしながら列車は谷間を軽やかに、少しずつ登ってゆく。
 少しずつお客さんが降りていって岐阜から長野へと変わる。


 途中、特急をやり過ごしたりしながら、さらに坂道を登ってゆく。テキストが傍らであっても東海道線とは気分が違って好ましい。お休みの日の相応しいルートだとは思う。
 鳥居峠を越えた奈良井で再び列車は小休止。今度は下りの特急に抜かれる。

客車みたいに音が消える、までは行かないが、山間の小駅、待避線に歩みを止めると時は止まった感触はある。車内は静かだ。タバコを吸いにとか、写真を撮りに、なんて人も見かけない。 

 夏の空が木曽路に広がる中、しばらく待っていると

 特急がその場の空気をかき乱してゆく。ホームから車内に戻ると少々の間があって発車の案内がある。列車は谷間を北へ進むとだんだんと広々としたところへ出てくる。中央線のジャンクション、塩尻の駅はもうすぐである。
 塩尻の駅で木曽谷からのお客さんが少々降りてゆくのと入れ替わりにたくさんお客さんが乗ってくる。自分も今日は塩尻下車。まもなく向こうのホームに入ってくる新宿行きの特急に先程見かけたような人たちを見送る。
 そして塩尻の駅には普通列車が二本停車中。甲府へ向かう普通列車と並んで停まっているのは

 中央線、辰野までの普通列車。今日はこちらに乗る。甲府まで真っ直ぐ行けば接続も良く東京方面へ進むのに対して、辰野経由だと接続も悪く、横浜への帰着がだいぶ遅れる。でもたまには行ってみたい。
 前はクモハ123という荷物電車を改造した車両が1両で走っていたこの区間。クモハ123が引退して大糸線E127系が廻ってきた。1両が2両になって、まぁかなり空席が目立っている。その空席が一向に埋まらないまま発車時刻を迎える。
 山をまっすぐトンネルでぶちぬく今の中央本線に対して辰野廻りは山を南側に迂回して進む。立派な複線線路を左に分けて列車は山道へと入ってゆく。

 30年前は特急あずさも通った山道。立派な線路は草生していてあまり手入れされているように見えない。コンクリート枕木の白さとのコントラストが妙に印象的。

 途中幾つかの集落があってそのたびに駅がある。数少ないお客さんは二つの駅で降りてゆく。木曽谷は晴れていてん夏空が広がっていたが、この時間、雲が増えてきて本来の梅雨空の雰囲気になりつつある。
 谷が開けてくると伊那谷の入り口、辰野に到着。この先、岡谷までの列車は1時間待ちとなる。その代わりに

 飯田線豊橋までの直通列車がやってきた。この列車に乗ると18時過ぎに豊橋到着となる。豊橋からはいつもの530Aに間に合う訳で、そういうルートでも良かったかなぁと今更ながらに思う。18きっぷならそのあたりは融通は利くが、手元にあるのは普通乗車券。

 大人しく改札を出る。係員、丁寧だったけど券面は確認しなかった。もともと特急停車駅だから立派な駅舎だが、ずいぶんと寂れた感じ。ここでの一時間は昼食に当てるつもりだが、さて。

 駅前の老舗旅館らしいところに「食事」の文字が見えたので入ってみる。玄関で靴を脱いで入るタイプの店。ちょっと敷居が高いがお値段は敷居ほど高くは無かった。注文してしばらく待つ事になるが、時間はあるので全く問題ない。


 注文したのはソースカツどん、¥900。伊那谷をちょっと下った伊那市の名物だからこのあたりで出てきてもおかしくはない。
 味噌汁と煮物が上品で、お店の実力が垣間見えた感じ。カツどんも美味しく頂く。
 だいぶ時間が経った。駅に戻るとあと20分で岡谷に向かう列車が来るところ。しばらく待っていると

 飯田線からの普通列車がやって来る。この列車がそのまま中央線を岡谷まで乗り入れることになる。先程、辰野まで乗ってきた列車に比べれば混んでいる。高校生の姿が目立つが、所用客や出張らしいサラリーマンもいて、意外と幅広い。
 岡谷まで10分少々。この先も普通列車に乗りたいところだが、ちょっと接続が悪い。まぁ普通列車を待っても良いのだけど、横浜にはそれなりの時間には着きたいので、ここは特急に乗ることにする。


 あずさ20号、新宿行き。特急券甲府までにしている。昼間の中途半端な時間だし、自由席にした。

 岡谷では半分も埋まっていない自由席。でも諏訪の盆地、下諏訪上諏訪茅野と律儀に停まる間に席は埋まるようになる。この列車は停車駅が多く、富士見や小淵沢、韮崎にも停まる。だんだんと混雑が目立つようになってきた。
 岡谷から1時間。停車駅が多い分、所要時間も掛かって甲府に到着。自由席の入口には長い行列が出来ている。それを尻目に列車を降りる。このまま新宿まで乗り通すと16時半過ぎには到着出来るが、甲府から先は普通列車に戻る。



 甲府の駅。ホームの向かい側に待っているのは115系。がら空きの車内を見定めてからお酒を買ってボックスに転がり込む。

 ビアホール中央線、とはいえないか。甲府に限らず中央線の駅では地場のワインが売っていたりするので、普段は飲まないワインに手が出る。
 甲府を出て数分でビールで無くなる。後はワインをちびりちびり。甲府盆地が尽きてきて笹子峠にアタックする手前でワインも尽きる。ちょうど甲斐大和で特急待避となったが、この駅で長時間停まっても結局買い物は出来ない。ビアホールはこれにて終了となる。 
 後続の特急をやり過ごしてさらに東。トンネルを抜けて山を下るとこの列車の終点、大月。ちょうど富士急行の列車が見えたが、元205系であった。本数も増えたみたいで、大月に元5000系が全くいないという頭のクラクラしそうな景色が見えている。

 最後は中央線の特快。この顔を姿を見せると旅が急に移動に変わる。まだまだ景色は山の中だが、大東京はこんなところまでその触手を伸ばしているのである。
 がら空きの特快に揺られて新宿を目指す。だんだんと席が埋まると小仏のトンネル。高尾まで来ると満席になった。今日の切符は東京廻りなので八王子は乗りとおす。滅多に乗ることない中央線の特快。この春から本数がかなり増えている。どんなものだろうと思ったら結構ゆっくり。これなら京王特急が遅くても勝てるかもなぁと思ったが、実際には先行列車でトラブルがあって遅れたようだ。
 定刻なら新宿に17:47。湘南新宿に乗り換えようかと思っていたのが10分以上遅れて乗り換えがカツカツになる。何だよと思ったら湘南新宿も遅れていて乗り換えが成立。これで自宅には19時に着くことがほぼ確定する。夕方のラッシュに揉まれつつも30分ちょっと。最後は地下鉄で。