妻の起きる気配で目が覚めて一度寝て、でも結局5時前に起き出した。土曜日の早朝。まだ外は暗い。
 少々身支度。一緒に出掛ける。出掛けるのは一緒だが行き先はバラバラ。南太田から

 15運用1533編成に乗ると、妻は横浜から羽田空港行きに乗り換え。月曜日を休みにして海外に出掛けるそうで。こちらは仲木戸まで乗り通して横浜線を志す。
 昨日、横浜で買っておいた18きっぷ、1日目に日付印を入れて貰う。乗り込む電車は朝6時発。妻のおかげでしっかりと早い時間から動き回れる事になった。

 横浜線を八王子まで乗り通す。東神奈川でがら空きだっった電車は奥へと入り込むにつれて混雑してくる。土曜日と言えども朝の動きは激しい。
 八王子の手前で中央線、甲府行きと併走する。平日ダイヤなら2分接続で乗り換えが出来るのだが、休日は同着でほぼ乗り換えは無理。勢い良く階段を駆け上がって行った人がいて、もしかすると間に合ったかも知れないが自分は無理。もし甲府行きに乗れたならこの後の行程が大きく変わったのだけど。大人しく後から来た高尾行きに乗る。

 南太田から1時間半が経って夜も開けたが山際の高尾は寒い。ここで接続は大月行き。後続の小淵沢行きに乗る心づもりだったが、大月まで先行する事にした。このあたり、計画があるようで無いような動きとなる。ボックスシート115系に乗る。中途半端な列車だからか、おおむね1ボックス1グループぐらいの乗り具合。
 相模湖、藤野とお客さんが減ってゆく。高校生が中心だが、ゴルフバックを背負った人も目立つ。朝早起きな趣味は18きっぱーだけではないらしい。空席が目立つようになると大月着。接続列車は特急の後、小淵沢行きが30分後。ずいぶん間隔が開く。その間に朝食と富士急見学をしようかと思う。

 富士急行大月駅。そこにいるのは205系改め6000系。ぷらっと大月に来れば元京王5000系に会える筈だったけど、今はこういう事になるのかと改めて認識する。ひとまず出直し。駅構内の立ち食いそばに向かう。

 吉田うどん¥390と言うメニューがあったから期待せずに頼んでみたら、確かに期待してはいけないうどんであった。¥490なら怒るが¥390までは仕方ないか。もう一度富士急のホームに戻る。

 今度は元5000系である。一発で復元車を引き当てるのは、なかなか難しいのだろうなぁ。

 そこそこ充実した30分。そして小淵沢行きを捕まえる。中央線の旅はこれからが本番である。

 中央自動車道の事故があってから二週間弱。大月から先、その中央道と国道20号が車窓に見えてくる。当然ながら中央道にはクルマの陰が全く見えないその一方で、20号線も、渋滞している、と言うほどではなかった。国道20号線笹子峠なんて、中央道に比べれば細道もいいところだろうが、今日のところの現場は、意外と落ち着いているように見える。

 笹子のトンネルを越えて甲府盆地へ。雲が目立つが少し青空も見えていて、最初の雨という予報に比べればだいぶマシ。天気に恵まれた気分にしてもらえる。薄日の射す盆地へと降りてゆくと塩山で15分停車。

 特急に抜かれるそうだ。新宿7時以降は次々と特急が出るから何度か歩みを停める事になる。
 下りの特急が入ってくる。そこそこ混んでいるが満席ではない、多少の余裕がある。一方上りの特急は満席。山梨の人は東京に出ざるを得ない一方、首都圏の人たちは山梨への旅行を手控えているのかも知れない。
 甲府へ遊びに出るらしい人、あまり乗ってこないまま甲府まで着く。ここでまた10分待ちだそうだ。今度は新宿8時の特急を待避。ついでに

 鳥沢で見かけた貨物列車にも追いつかれる。こののんびり感。特急列車の合間を縫って走る中央線ならではの時間だ。目の前に売店があってふとビールを飲みたくなる。列車は空いているし、条件としては最高なのだが、ちょっとやめておく。

 一際空いた列車は少々空の重くなった甲斐路を西に。日野春で時間調整と称して7分停まる。外に出てみるとホームは濡れて水っぽい雰囲気。空気は一際冷え込んで、人の居住まいを正すよう強いてくる。凛とした冬の空気が心地よく、旅の気分がいよいよ高まる。
 休みながら走ってきた普通列車小淵沢には10:20の到着。上りホームに入る。折り返しは甲府行き。接続列車は篠ノ井線直通松本行きと律儀に案内される。10:31だからすぐの発車だ。
 目の前がそば屋だったので条件反射みたいに食券を買い求める。何となく今日は野沢菜天ぷらを選択、400円。

 一頃より絶対に麺の味が落ちていると思うのだけど、その記憶さえ封印すれば標準よりは圧倒的に美味しい。何度が京王線恥辱でも愚痴った気がするが、そろそろそんな気持ちの切り替えをしようと言う前向きな気持ちが芽生えてくる。がら空きの寒いホームで食べたからかもしれないけれど。

 松本行きは3両編成で来る。さすがにボックスは埋まっているように見えたがそれでも最後尾にいくつか空きがあった。明らかに18きっぱーらしい客が増えたが、東京方面から信州に行くのであれば、高尾を8時前に出る列車でこの松本行きに乗り継ぐのが正しい乗り継ぎ。大月で寄り道をしたり、小淵沢でそばを食べたりは出来ないけど、1時間寝坊できたはずだ。

 ボックスを確保できた上に停車時間があるからついついお酒を買ってしまう。小淵沢売店はサッポロの取り扱いが無く極めて遺憾なのであるが、地元に敬意を払いワインにする。井筒ワインとか扱っていた時期も有ったと思うが、今はメルシャンだそうで。すっきり飲みやすいワインだ。
 小淵沢でもちらちら雪が残っていたが、信濃境を越えて長野県に入ると少し白い物が目立つようになる。山は雲に霞む。そして雨が降り出す。
 茅野まで来ると列車は混む。ワインの瓶は鞄にしまい込む。さすがに昼間から酒を飲んでいる相客は嫌われるに違いない。続きはまたどこか、空いてきたら。蓋の出来るワインはこう言う時にありがたい。ビールだとこうは行かないから飲み干すことになるのだろう。
 案の定ボックスが埋まり出して、列車は諏訪湖沿いを行く。暖房とワインが効いたのか少々眠気を覚える。今のうちに寝ておこうと上諏訪を出た直後に思ったのだが目覚めてみるとまだ岡谷だった。しばらくぼんやりしていたが、結局塩尻までには意識が戻る。それでも眠気が吹き飛んだからそれなりに価値有る時間である。
 4分遅れと案内があった気がする。中央線の特急はダイヤが乱れやすいからその影響かも知れない。松本平は快晴で雪も消え、同じ長野県内とはとてもとても思えない雰囲気。お客さんが増えて車内少々暑く感じる。
 結局松本には4分遅れたまま到着。まぁ乗り継ぎ時間はそこそこあるのであんまり問題にはならない。

 今度は長野行きに乗り換える。20分少々時間があるがホームに降りてみると待っていたのは2両編成の115系。ボックスには空きが無く、扉横のロングシートに居を構えることになる。
 駅のはずれに松本電鉄の列車がやってきたから見に行ってみる。

 この形姿は言わずと知れた京王3000系。だが、整形顔を真っ白に塗りだくった姿は正直、どうかなと言う気がする。何か変化があるとまだ良いのだけど。
 長野行きの電車に戻る。12:10の発車だが名古屋からの特急が数分遅れた関係か、こちらも3分程遅れたようだ。特に案内は無かったから3分なら許容差の範囲なのか。
 立客が出るほどの盛況で列車は篠ノ井線を走る。松本から長野への区間。しばらくぶりの乗車。たぶん10年以上乗っていない。しばらくぶり過ぎて車窓の記憶、駅の雰囲気、なにもかも忘れている。
 特急のすれ違いでさらに遅れて4分遅れの案内が初めてはいる。4分遅れは仕方ないが、さらに遅れが膨らむと次の乗り継ぎが気になることになる。
 松本からのお客さんが降りる一方で長野へのお客さんが乗ってきて座席は空かない。空かないまま長野平への下り坂になる。


 ここはしっかりと記憶にある。姨捨の駅。山影の姨捨は雪化粧だが、長野平は青空の下にある。
 山から下ると底抜けに明るい盆地となる。しなの鉄道、というより信越線と今でも言いたくなる線路と合流するとまもなく長野。2両の電車にお客さんが溢れた。2分遅れの到着。

 本来9分乗り換えの次の電車。2分遅れたぐらいなら問題無く乗り換えできる。今度は3両編成になった。そして空いている。塗装は高尾以来ずっと一緒だが、今度の車内は緑のデコラに青地のモケット。急に国鉄の電車に乗ったような気分になる。

 ボックスを一人で使わせてもらい、列車は出発。豊野までにお客さんは半分降りたから列車は一際閑散とする。そして車窓は本格的に白くなる。

 一駅ごとに雪が深くなる。12月15日になるのだし、妙高高原辺りのスキー場、いい加減、雪が積もらないと大変ではある。
 閑古鳥の鳴く観光地、妙高高原を境に列車は坂を下り出す。今までの長野県なら坂を下れば雪は消えるがここは新潟県。平地に出ても雪は残ったまま。雪が残ったままだから終点が近づいたことを失念していて、気が付くと

 北陸新幹線上越駅なんて建設現場に出くわす。新幹線の開通は2015年3月だそうだからあと2年少々でしかない。九州も北陸も同じ感想だが、北陸新幹線なんてものが現実化するとは思ってなかったので、実際の現場を目にすると心から驚く。

 直江津には15:12の到着。朝の6時に東神奈川を出てから9時間。とうとう日本海側へとたどり着いた。今日はこの後、富山を目指すが次の列車まで1時間ほど間が空いている。
 改札に18きっぷを示すが全く関心を示さないのでそのまま出る。直江津の駅もいつの間にかきれいな橋上駅舎になっている。その通路には


 2015年北陸新幹線開業の幟が並ぶ一方で駅前は寂しいまま。新幹線上越駅は先程見てきた通り脇野田駅の近くに出来るのであり、直江津の駅前の福音にはならないであろう事は容易に想像出来る。
 出かけるところはないので駅に戻る。売店を覗くと

 「風味爽快ニシテ」がずらっと並んでいる。サッポロビール新潟県限定商品。商品の存在は知っていたが、直江津新潟県であることをすっかり失念していた。勢いで500ml缶を二つ買い求める。
 駅に戻ったので構内で行き交う列車でも撮ろうかと考える。再び有人改札18きっぷを示すが全く関心を示さない。こんな人がいるからキセル乗車が蔓延する事にある。

 金沢に向かうはくたかと新潟に向かう北越北越はよく見ると485系の1000番台で組成されている。秋田運転所にいた連中である。思いがけない眼福。涙腺が緩む訳ではないが、懐かしい想いが広がる。

 もう一本。くびき野なんて列車も485系


 既に富山行きの列車が入っている。455系。国鉄急行型の生き残りである。この車両に乗せて貰えるのは嬉しい。ここから2時間が楽しみである。