蒼い絶滅危惧種 その2

 A個室には電源がある。それを幸いにPCを立ち上げ、ついでにカメラの電池も充電しておく。列車乗り継ぎの旅をすると、電源事情が悪くて難儀するのだけど、20年前に作られた個室寝台車にコンセントが付いているとは思わなかった。
 酒を飲みつつ恥辱の整理をしていると、列車は大宮に着く。 

 線路一つ挟んで向こうは上りホームなので閑散。下りホームから丸見えだったら気まずいだろうけど、これなら現実感が無くて済む。
 列車はこの先、高崎まで停まらない。思い出した頃に暗闇に駅が流れて行く。普段ならまだ夜の早い時間だが、明かりの見えない夜汽車の車窓を見ていると、実際の時間よりも夜が深まっているような気がしてくる。
 高崎到着で日本時間の日本に引き戻された。

 まだ23時前。駅にはこの後の列車を待つ人が何人もいてこちらに背を向けている。乗れない列車をまじまじと見つめても仕方ないということか。2分ほど停車の後、発車。高崎で乗ってきた人向けだろうか。検札が廻ったようで車掌の声が通路から漏れてきた。
 高崎を過ぎるとさらに漆黒は深まる。駅の灯りにも気がつかなくなり、車窓には闇夜が流れるだけ。
 途中、急ブレーキが掛かって停車する。何かあったのならこの後のことが心配になるが数分で動き出した。やれやれである。
 水上の駅に停まったのは気がついた。湯曾日の駅名票が流れたのも覚えている。さすがにそろそろ寝ようかと思いソファー仕様にしていたベットを作る。ベットを作ってしばらく写真を整理していたが零時を過ぎて、いい加減寝ようという気になる。