CX703 B-HNQ B777-300 HKG→BKK


 2番搭乗口。バンコク経由コロンボ行き。キャセイパシフィック航空703便は20:05の出発である。であるのだが、

 出発20分前なのだが、まだ飛行機の姿は無い。どう考えても定時出発にはならない状況である。2番搭乗口。ここにもキャセイのラウンジはある。

 工事中で一部のみの営業だが、どうみても時間はあるから入ってゆく。搭乗便の状況も知りたいし。受付に搭乗券を提示して新しい出発時刻を尋ねると20:45との事。40分遅れ程度で出発出来るなら、まぁ良いかと思う。
 こちらも他のラウンジ同様に空席は殆ど見当たらない。先程と同じようにパソコンのある席だけが空いていてそこに座る事になる。
 20:30になったから搭乗口に戻る。

 さすがに飛行機の姿が見える。B777-300の大きな機体が既に乗客を乗せ始めているところ。結構な搭乗率なのか、長い行列が少しずつ機内へと飲み込まれてゆく。

 既にファイナルコールが掛かっている。自分もそろそろ乗り込む事にする。
 この機材は先程乗ってきた飛行機と違って、ごくごく普通のビジネスクラスB777-300はキャセイでは近距離国際線用と言う扱いのようで、一世代前、JALのスカイラックスと瓜二つのシートが並んでいる。ビジネスクラスもお客さんは多いようで、見た目ほぼ満席。

 ウェルカムドリンクはと聞かれて「シャンペン プリーズ」と。先程までは「酒、もういいや」だったのに飛行機に乗った途端に良く飲めるなぁと我ながら呆れる。口に含むと、その液体は優しく体に染み込んでゆくような気がするから不思議だ。 

 こちらはバンコクで降りる人に配られた、入国書類。それに入管手続きのファストレーン利用券。ビジネスクラス以上の搭乗客に渡すらしい。前回行った時は普通の入管で特に待たされる事無く入国できたけど、バンコクの入管は、混んでいる事が多いそうだ。さて、今日は威力を発揮するか、否か。
 20:45を過ぎてもお客さんは一人二人と乗って来る。直前に搭乗口が決まるような状況だから、咄嗟に集まれない人もいるだろう。地上係員と客室乗務員が書類やら何やらのやり取り。お客さんの人数を数え始めたりする。チェックインしたお客さんと実際の搭乗客数が合わないのかも知れない。時間が少しずつ過ぎてゆく。
 20:58、ようやくDoorclose。21:00、Pushbuck。雨は相変わらず強く降っているようだ。その中を21:05、Taxing。離陸できるだろうかと思うが、滑走路へと向かうと、CAやらCIやら、近距離国際線の遅延便だろうか、が離陸してゆくのが見える。この飛行機も、まぁ離陸できるのだろう。
 滑走路に進入する。雨に濡れた誘導灯が美しく光り輝く。一瞬飛行機は呼吸を置いた後、意を決してフルスロットル。21:16、Take off RWy07R。
 脚が地を離れた次の瞬間に飛行機は風に翻弄され、揺れ始める。上空まで上がるほんの数分の辛抱、なのだが、飛行機は高度3,000mぐらいで一旦上昇を中断、水平飛行となる。右に左に大きく揺さぶられながらの飛行が続く。
 10分少々で揺れが落ち着いた。高度も上がったようだ。2点連打のベルが鳴って乗務員達がサービスの準備に席を立つ。メニューが配られた後、21:35、ベルト着用サイン消灯。お客さんも自由に歩きまわれるようになる。
 香港からバンコクへは2時間半のフライトでしかない。先程の仁川-香港よりも近いので、サービスは手早く始まる。

 まずはワゴンが廻ってドリンクサービス。それとほぼ並行と言って良いタイミングで食事の提供も始まる。

 距離が短いからか一皿減って前菜兼サラダみたいな形で供される。パンは先程と同じように別に配られたが、お腹は空いていないので1個にして貰う。「Only ONE?」って聞かれたけど、普通は皆さん、沢山頂くものなんでしょうかねぇ。

 メインは2択。一つはチキンで一つはラムと仰る。先程チキンは食べたからラムにして貰った。ご飯が添えてあるがこれがちょっとあんまり美味しくない。食べ物に対して美味しい不味いはあんまり言わないようにしているのだが、今日のご飯はちょっと突き抜けてしまった。申し訳ないけど途中でFinish。

 ハーゲンダッツも2個目。先程はバニラだったから今度はストロベリーにしておく。一緒にミルクティを頂いてみた。普段飲まない物ではあるが、今日は香港の航空会社に敬意を表す。

 チョコレートを頂くともう飛行時間はそんなに残っていない。飛行機はインドシナ半島を横断中。もうまもなく降下を開始する所。23:09、機長さんから何やら案内があったのち、降下が始まる。今度は大人しい降下だ。
 少々揺れた後、23:20、ベルト着用サインが点灯する。先程の香港を思えば、実に穏やかな降下。座席に身を沈めて全てを委ねるゆったりとしたフライト。通路側の座席ゆえ、外の事はさっぱり分からないまま、小さな衝撃が来て着陸を知る。23:38、Landing。23:44、Spot in。


 香港とバンコクの時差は1時間。時計を1時間遅めてももうすぐ23時と言う時間帯だ。この時間、さすがに到着便も少ないからか、空港は空いている。イミグレーションも空いていて、普通の入国窓口でさほど並ばずに手続きが出来たから折角のチケットは無駄となる。
 香港からずっと続いていたウダウダ感はどこかに消え失せた。明らかにテンションが上がっている。普段こんな事はなかなか無いが、まだ二度目のタイ。一人で歩くのは初めてだし、この旅の中で初めて緊張感と言うものが表に出てきた。
 荷物の出てこない時間だったから先に両替を済ませておく。1万円が3880バーツになった。3年前に来た時は1万円が3000バーツ前後だったから、結構な円高、という事になる。「Small change please」とお願いして出てきたのが1000バーツ2枚に500バーツ2枚って調子だったから「More small please」なんて言った事も無いデタラメ英語が出てくる。両替の窓口が仕方ないなぁともう少し崩してくれたから通じたに違いない。
 名古屋から仁川〜香港と旅してきた荷物も無事に届いていて受け取れる。さて、市内に出ますか。
 明日の事を考慮してバンコクのホテルはファランポーン駅近くのホテルを用意している。空港から市内への移動。タクシーに乗るかリムジンバスを使うか。前には無かった鉄道も開通していて、それだとマッカサンかパヤータイがターミナルとなる。マッカサンで乗り換えれば地下鉄でファランポーンまで行けるのだけど、市内に着いて地下鉄がまだ走っているかどうかは定かではない。
 間違いないのはファランポーンまで行くバスに乗る事だが、バス乗り場が見つからない。どうも良く分からないので、結局鉄道で市内に出る事にした。急行はマッカサンゆき、普通列車はパヤータイ行きの筈。市内で地下鉄があればそれに乗ればよし。無ければタクシーでも仕方が無い。マッカサンまでの切符を買おうとすると「マッカサン行きは23:40だよ、パヤータイでいいな」と言われる。そう言えば利用客低迷の打開策としてパヤータイまでの急行列車が設定されたような事をどこかで読んだ覚えはあるが、何でマッカサンまではダメなのだろう。まぁパヤータイでも良いかと思い、言われるままに切符を買う。

 紙の切符が渡される。ホームに降りるとちょうどパヤータイ行きの電車が入ってくる所。

 ボックスシートの並ぶ車内に落ち着く。何時発なのかは知らないが、あんまりお客さんは乗ってこないまま23:30、ドアが締まる。すーと動き出すとまもなく高架へ。空港の施設が見え、大きくカーブすると高速道路と並んで走るようになる。道路を行く車に負けず快調に飛ばしてゆく。
 暗かった車窓の景色にぽつぽつビルが見える様になるとどうやらバンコクの中心地が近づいてきた様子。マッカサンの駅を通過する。何で停まらないのか定かでないが、マッカサンゆきの急行列車と、パヤータイ行きの急行列車は全く別扱いであるようだ。
 快調に飛ばしてきた列車の速度が落ちて終点パヤータイ。23:45過ぎだから15分少々でかけてきた事になる。渋滞になると一声2時間だったスワンナプームからバンコク市内の交通が劇的に改善した事が良く分かる。

 ホームからコンコースに降りると係員がいて切符が回収される。普通列車用のエリアとはロープで区切られ、急行で来た乗客は1箇所だけ機能を殺した自動改札を通って外に出るようになっていた。どうやら運賃体系が異なる急行列車をパヤータイまで通すにあたって急ごしらえの対応をしているらしい。マッカサンに停まらないのも、運賃授受の関係があるのかも知れない。
 時差の分、2時間延長戦突入中の9月29日もあと15分。今日はこの先、ホテルに行く。駅の出口から外に出るとタクシーの列。声を変えてきた1台にふらふらと乗ってしまったのが良くなかった。乗ってから、こいつ、メーター使うかなと気になりだして「Metar please」って言ったら150バーツだと抜かす。
 日本と違ってそれなりにインフレしている筈だから今日この瞬間にぼったくりなのかどうかは判断出来ないが、メーターで走れば50バーツ程度の距離のはず。多少上がっていても倍の100バーツになるとは思えず、明らかにぼったくりに違いない。大声を出して抗議すべき状況だが、延長戦も大詰め、さすがに疲れた。面倒臭くなってそのまま。あーあ、後々の人のために良くない事をしてしまった。
 渋滞の無い道路を飛ばしに飛ばす。サイアムの辺り、見覚えのある街を抜け、ファランポーンの駅を右手に見る。ちょっとイメージしていたのと違う所に連れてゆかれてここだよと降ろされた。支払う段になって50バーツ札が無く、100バーツ2枚を出すのも嫌だったから140バーツでThat allとまけて貰う。それでも高いけど。
 ホテルのフロントに立つともう24時を過ぎている。こちらから名乗らなくても「Mr ○○○○」と声を掛けられる。日本人が泊まる事は珍しいのかも知れない。
 部屋に通され落ち着く。明日の朝は早いから可及的速やかに寝るべきだが、先程のタクシーの事もあり、神経が立っている。水も買っておきたく、適当にコンビニを探しに行く。

 ホテルのまん前、屋台街らしいが、この時間はどこの屋台も店じまい。何軒かが後片付けをしているだけ。コンビニを見つけて水とビールを買おうとしたら、ビールの所、ショーウィンドが開かなくなっている。24時以降はアルコール類、販売停止なのだった。
 落ち着かないままホテルに戻る。落ち着かないが明日は早い。携帯の電源を入れると日本時間2:40なんて表示が出る。明日はこちらの時間で5時には起きたい。あと4時間少々。シャワーだけを一浴びし、明日の準備だけ済ませると、今日は寝る事にする。目覚めてから21時間。長い長い一日がようやく終わる。