常夏の秋

 常夏の島にも秋がきているのか、意外と暑くない。決して寒いわけでないから過ごしやすいというのが一番しっくり来る言い方。聞くところによるとハワイのベストシーズンはこの時期であり、ホテルやら何やらが高いのもこの時期だそうだ。
 一日早く着いていた妻と到着口で合流する。顔色が悪いと心配された。飲みすぎの時の顔だそうだ。やっぱりと事の顛末を掻い摘んで話しておく。中部国際空港でのチェックイン時の話しもあわせて。

 リムジンバスでホノルルの中心部に向かう。お客さんは半分以上が日本人。高速を走り始めると運転手が英語でジョークを飛ばし始める。笑ったのが二人。「Oh two peaple」と今度は日本人含めてどっと沸く。
 そんなこんなのうちにホノルルに入るこむ。今日はアラモアナ近くのホテルなので割りと降りるのは早いほう。既に昨日チェックインをしてくれているので、時間まで待たされる事もなく部屋に入ってしまえる。

 少し陸よりなので期待していなかったけど意外と海も望める。
 ベットにごろんとすればそのまま寝てしまいそうだが、それだと何のためにホノルルにいるのか良くわからなくなる。動き回れるかどうかは分からないけど、ひとまず動いてみようかと思う。まずはお昼ご飯。夕べ食べたものは全部出してしまったし、今朝は結局何も食べていない。さすがに空腹感はある。
 ホテルからすぐのところがアラモアナのショッピングセンター。その中にあるフードコートに行く。ここならうどんとか中華粥とかお腹に優しそうなものもあれば、コテコテのアメリカンな食べ物まで、色々と揃う。結局、

 でも選んだのはロコモコ。ちょっと辛目のクレスビーソースが美味しい。ご飯はちょっと残念な感じ。カルフォルニア米かな。何となく移民したての100年前に思いが飛ぶ。お米では苦労しただろうなあと。
 アラモアナを後に一度ダウンタウンの方へ向かう。ゆきたい場所は中華街の近く。そちら方面にゆくらしい6番系統のバスが着たので「China town?」と聞くと乗れと言うので乗り込む。19系統か20系統なら間違いないのだけど、まあ何とかなるだろう。バスはあまり見たことのない街並みを走る。王宮が近くにある筈だけど、よく分からないまま雰囲気が変わる。
 中華街ならここだよと運転手に声を掛けられて降りる。考えていた所と若干違うがまあ仕方ない。わざわざバスを降りて指さしで行き方を教えてくれた運転手にお礼を言って言われた方向へと歩く。

 歩いてゆくと中華街的な雰囲気になってくる。街中にある公園の一角、長蛇の列ができていて何かと思ったら炊き出しの列。100mというと大げさだけど公園から歩道に列がはみ出しているから百人二百人と並んでいるに違いない。街のあちこちにも「For Rent」と書かれた空店舗が見えるから、ホノルルの街、アメリカ自体も不景気のまっただ中ということなのだろう。

 中華街の外れに川があってそこを右に折れる。中山先生の銅像を横目にさらに歩くとそこにあるのは

 ご存じ、ハワイ出雲大社。先週のモヤモヤさまぁ〜ずで取り上げてたばかりだから日本人の列が出来ているかもしれないと思ったけど、テレビとは無縁の体で佇んでいた。折角なのでお参りをして社務所へ立ち寄る。テレビに出ていたヌシカンさんこと神主さんもいた。テレビで見た直後に本人にお目にかかるとは、何とも妙な気分。
 どうでもいいのだけど日本は旧暦の10月、神無月である。神無月には八百万の神はみんな出雲大社に集まる筈だが、ハワイに幾つかある神社の神様は、日本の出雲大社まで出向くのだろうか、ハワイの出雲大社で小ぢんまりと集まるのだろうか。
 さて、アラモアナに引き返す。先程行きのバスで貰ったトランスファーチケットを生かしてのバス。バス停を探して中華街をふらふら歩くと先程の炊き出し公園まで歩くことになる。すでに炊き出しは終わっていて、休日午後の憩いの場という風情だが、あるいは行き場がない人がブラブラしているだけかなぁ。

 アラモアナ行き、53系統にのる。王宮の前を通ったのは覚えているがその後はがっつり寝てしまった。起こされると終着のアラモアナ。眠いし体調良くないし、自分だけ一人、先にホテルに戻って眠る事にする。2時間ぐらいの昼寝なら夜眠れなくて何て事はないでしょうからというのは妻の判断。確かに2時間までが限度かなあ。ただいま15時半。18時までには戻るという妻よりも早くホテルに引き上げる。
 ベットに潜るとやはりがっつりと寝てしまう。妻が帰って来た気配で目覚めると18時。そろそろ外は夕暮れ時。ベランダに出てみると

 向かいのホテルさえなければ絶好の夕景だったのだけどなあ。今までは何とも思っていなかったけど、下手にきれいな夕焼けが見えちゃったから突然悔しくなる。
 ちょっと出雲大社を見て寝ていただけだから難だが、夕食の時間である。再びアラモアナに出かける。何でも揃う場所だからついついお世話になりがちだ。食事の前に買い物少々。衣類を少々買う。衣類の買い物は正直面倒なのだが、そこですぐに決められる時と決められずにいいやとなる時がある。今日は決断が早い。決断が早いのは調子のいい証拠でこれだけ見れば、決して悪い状況ではなさそうだ。

 食事はハンバーガーにした。先程のフードコートではなくちゃんとしたレストラン。そんな店もアラモアナには揃っている。面倒を見てくれる人がテーブル毎に決まっているアメリカ方式。時間が掛かるが郷に入らば郷に従えで。


 ハンバーガーに付け合わせのフライドポテトは食べ放題。ドリンクは別払いだが飲み放題。空けばまた新しいのを持ってきてれる。ハンバーガー自体も岩のように大きいからナイフで二つに分けたあとでかぶりつく。こんなものを平気で平らげ、更にフライドポテトをお代わりする連中とよく戦争をする気になったなと思う。体力差がありすぎるに決まっている。
 食事に1時間以上を掛けるともう21時近く。ホテルのそばにはABCストアはないから買い物もアラモアナの中ですませておく。普段ならビールを買って部屋で飲むところだろうが今日はさすがに控える。水だけ買っておく。書店がまだやっていたのでちょっと覗く。本を買う訳でないけど、ちょっと見てゆくだけでも楽しい。
 ホテルに戻ると22時。1日早く来て時差を解消した妻は早々に寝てしまう。本日到着。夕方寝てしまった自分はすぐには寝れないから恥辱の続きを進めておく。時刻は0時を過ぎた。いい加減寝ようか。ベットに入って目を瞑る。すぐに眠れるものでもないけど、時差ボケ解消しないかなぁと考えていたら、いつの間にか意識が途切れた。長い長い、二日間のような11月20日もまもなく終わる。