JO84 JA603J B767-300ER NGO→HNL


20時の段階で閑古鳥の鳴いていた中部国際空港。最終便がまもなく出る21時半過ぎも閑散としたままである。免税店の営業も終わって次々とシャッタ を降ろしている。そんな中、16番搭乗口の辺りだけが少々抑えた感じのざわめきに包まれている。22:05発、ホノルル行きJO84便を送り出す搭乗口だ。

 待っているのはB767-300。JA603J。23日の祝日に有休を絡めるとそれなりに連休を捻り出せるからか、搭乗口には結構な人数が列を成している。

 既に優先搭乗の搭乗口にもエコノミーのお客さんが列を作っていたから一番後ろに並ぶ。今日は特典航空券、ビジネスクラスで用意してきた。逆に言うと特典で枠があいていたのが名古屋経由だけだったから名古屋を廻っているのだけど、それはまあ、良い。
 先程チェックイン時にビジネスクラス。今日は満席と聞いたけど見事に席が埋まっている。元々指定の席は並びで老夫婦が座っていてまあ変更を断らなくて良かったかなちと考え、改めて自分の席に座る。
 JO担当便なのでタイ人らしい乗務員のたどたどしい日本語で案内が入る。ホノルルまでの飛行時間、6時間55分とのこと。途中前線の影響を受けるそうだ。21:55、Door close。定刻よりも早く22:01、Push buck。22:11、Taixing。本日最後の旅客便が中部国際空港を旅立つ。誘導灯の明かりが目映く広がる中を静々と進む。心持ちか先程のB777よりも大人しいエンジン音である。一面に明かりの広がる滑走路が視界に大きく広がる。22:11 Take off RWy 36。軽やかに加速して、そして地上を離れる。ぐんとぐぐんと地上の灯りが遠くなった。
 ベルト着用サインが消えないなあと思って何となく外を眺める。真四角な灯りが幾重にも広がる不思議な夜景が広がっている。たぶん、何かのハウス栽培なんだろうなあと思いつつ眺める。まだベルト着用サインは消えない。
 落ち着いた低音が流れて機長さんから案内が入る。時刻は22:24。左手に焼津の夜景がご覧になれます、とのことだけどあいにく自分の席は右手。ならば今見えているのは太平洋の漆黒か。
 機長さんによるとホノルル到着は現地時間の10:10、ほぼ定刻だそうだ。今ついているベルト着用サインは5分ほどで消灯できる見込みだそうだが、あと1時間ほどで前線の影響で揺れるとのこと。
 22:30、ベルト着用サイン消灯。意外と長かった。映し出された現在位置はもう大島の上空である。
 前側のギャレーではサービスの準備が慌ただしく始まっている。そしてまず提供されたのが

 ウェルカムドリンク。シャンパンとオレンジジュースの二択は以前と変わらない。熱々のおしぼりも配られて穏やかな時間が始まる筈だった。

 シャンパンのグラスを傍らに恥辱を綴る。離陸の場面間でもって行けた所で クロスの準備。

 飲み物を訊かれたから同じものを頂く。これはすぐに提供される。おつまみも一緒に出される。空腹ではないから食べなくても良いのだけどアメリカの入国時、スナック類の持込は禁じられている筈。チェックがあって見つかると厄介なので食べてしまう。
 時々揺れが来る。上昇している間よりも揺れが大きいようにも思える。それでもサービスは続く。こちらとしても食事をして寝てしまいたいのは間違いないので、ありがたいことではある。23:19、機内食のリクエストを聞かれる。聞かれるまでは洋食がいいか和食がいいかと迷うのだけど、聞かれた時には迷っているのに反射的に「和食」と答えてしまう。まぁすぐに寝るから胃に優しいものの方が、いいだろう。
 23:21、機長さんから案内。これより前線の影響で揺れが予想されるためベルト着用サインが点灯するとの事。15分程度の見込みだそうで、サービスが中断してしまい申し訳ございませんと。そして若干命令調に「客室乗務員も全員着席し、着席状況を報告してください」と。そしてベルト着用サイン、点灯となる。
 少々揺れが始まって続く。まぁ大した揺れではないので機内サービスを続けようと思えば続いたかなぁという気がしないわけではない。でも、続けて何かあったときの最終的な責任は機長にあるわけで、揺れの予報と少ないフライト時間と機内サービス。色んなものが頭を過ぎる中での判断は、大変だろうなぁと何となく考える。
 23:41、再び機長さんから案内。引き続き揺れる可能性が大きい状況での飛行である事、先行機からの情報でも揺れている事からあと数分はベルト着用サインを点灯する旨、お詫びと共に告げられる。
 23:45、ようやくベルト着用サインが消灯する。機内サービス再開。そして24:00、ようやく食事が出てきた。

 いろいろなおかずが小奇麗に並べられたお食事はお酒と良く合いそうだが、いまグラスに注がれているのはシャンパンである。日本酒に行きたいなぁと考えて、醸造酒と蒸留酒のちゃんぽんは拙いけど醸造酒と醸造酒ならいいじゃないかと自分に言い訳。シャンパンの空いた後で日本酒を出してもらった。

 飛行機は相変わらず揺れている。味噌汁の中身が少しこぼれる。慌てて飲み込まねばならなくなる。

 0:30近くになってデザートが提供される。名古屋を出発して2時間半。ホノルルまではあと4時間半しかない。さっさと食べて寝てしまおうと考えたのが記憶の最後だった。食べきったのは間違いなく、寝る前にと立ったお手洗いでどうやら意識が無くなったらしい。気がつくとどこかで横になって介抱されていた。L1のドア横だと言うことが分かるまでしばらく掛かる。状況が分からないけど、気分は良くない。しばらくそのままで横になる。機体の揺れを体全体で受け止める事になる。随分と揺れるんだなぁと自分の事を置いておいてそんな事を考えた。
 介抱してくれてた乗務員さんが申し訳なさそうにベルト着用サインが着いたのでお席に戻って頂けないでしょうかと仰る。1時ぐらいだったか。席に戻って水を貰う。揺れているからか紙コップに蓋がついてストローまで付いている。ベルトを締め背もたれを倒す。とにかく寝てしまう事だ。先は短い。
 1時間か2時間ぐらい寝て、そしてうつらうつら。窓の外がどうやら明るくなっているようだが、まだ寝ていたい。機内が動き始めてどうやら朝食サービスが始まった様子だが、構わずに寝る。気分が悪い。全部吐き出したほうが良さそうだが、意識を戻してみるとベルと着用サインが付いていた。大揺れである。B767クラスの飛行機では経験した事のないほどの揺れで、YS-11のように下がる上がるはないけど、これは凄い。
 ようやく揺れが収まりベルト着用サインが消灯。席を立ってお手洗いに向かうが順番待ちである。立っているのが辛いので、先ほど面倒見てもらった乗務員さんに断ってジャンプシートに座らせて貰った。やはり座っている方が楽である。タイ人の乗務員さんがホノルル空港でクルマ椅子を用意しましょうかと声を掛けてくれたけどさすがにそれはどうかと思ったので断っておく。それでも立っているのが辛いようだとご好意に甘えなくてはいけないなぁ。
 お手洗い。順番に悩みつつ出せるものは全部出す。見事に食べた物が全部出てゆき、それで悪いものが抜けたのか、とたんに楽になった。ゲェゲェやっている声が外に聞こえたのが大丈夫ですかと声が掛かったが大丈夫ですと返事が出来る余裕がある。自分でも驚くほどの回復ぶり。飲みすぎたかなぁと成田以来の酒量を反復する余裕も出てくる。成田のラウンジでグラスビール2杯。名古屋のラウンジでグラスビール2杯に日本酒コップ少々。ウィスキーを少々に最後はラム酒ソーダで割った。機内ではウェルカムドリンクのシャンパン。大ぶりのグラスでシャンパン2杯か3杯。そして日本酒1合。ここまで8時間。飲み過ぎか。
 席に戻る。軽食をご用意しておりますがいかがされますがの問いにはさすがに無理だと思って水だけ貰うことにする。今度はガラスのコップで出てくる。
 4:00、あと1時間でホノルル到着の案内。ハワイ時間では9:00だそうだ。いつの間にか締められていたシェードを開けると

 11月20日、二度目の朝がそこにはいる。水を飲み干すともう一度背もたれを倒して眠りに入る。今は出来るだけ楽にしているほうが良い。

 窓外に島が見える様になった頃、ベルト着用サインが点灯する。このフライト何度目かの大揺れ、ではなく後15分で着陸とのこと。椅子を元の戻してもう一度、目を瞑る。最後の最後まで眠りを貪った方がいい。
 どうやら着陸の気配がして意識がはっきりする。空港らしい施設が見えてきて10:03、Landing。RWy 08R。急減速。広々とした敷地と見慣れない姿の飛行機がぽつぽつ佇む中をゆっくりとTaixingしてゆく。そして10:08、Spot in SP26。
 ずいぶんと迷惑を掛けてしまった乗務員さんにお礼を言って降機する。悪いものを吐き出して比較的寝たせいか、むしろ気分は良い。ひとまず

 乗ってきた飛行機を撮る余裕はある。そして

 B747-400の姿もここには健在。香港線でよくお世話になったJA8077が常夏の光を浴びている。