日本に帰ろう

 日本時間の6時過ぎはこちらの時間でまだ5時すぎである。経度の関係かまだ薄暗い夜の続きみたいな時間に目が覚めた。いくら何でも早すぎるので二度寝する。次に目覚めるとこちらの時間の6時となる。

さすがに明るくなってきて起き出す。テレビをNHKにすると7時のNHKが始まる所でちょうど良い。
 今日は帰国日である。香港から飛ぶ午後のJAL、特典で予約している。帰国以外の予定は無いからまぁ余裕と言ったら余裕の行程。シンセンから香港の空港へ直行するルートが確かあった筈であり、直行するなら11時ぐらいにホテルを出れば十分と思われるが、別のルートを志して9時ぐらいにチェックアウトする事にする。逆算して行くと、ということでNHK連続テレビ小説が終わる頃、こちらの時間では7時15分過ぎに朝食に出かけた。朝食は宿泊費に込みである。

 昨日の和洋中バイキングから和だけ外したようなメニューを頂く。油條の姿を見たらお粥が食べたくなり、ますます持って妙な並びになる。しかもこの粥、中華粥でなくて白粥だった。
 何とも不思議な朝食を終わらせると自室に。荷物を括って9時近く、部屋を出た。チェックアウト。福田岸口に向かう。あのささやかな歩道を荷物を引っ張って歩く気になれず、タクシーに乗る。

ドアマンに福田岸と行き先は伝えてあり、運転手にも伝えてくれているが、走り出して間もなく「羅湖?」と聞かれる。遠くまで連れていってふんだくる意図かと考える。「No」すぐそこだと身振り手振り。渋滞の激しい道。すぐそこではあったが数分掛かって駅のタクシー乗り場へ無事運ばれた。運賃は初乗り10元の範囲。10 元札を差し出すと足りないと宣う。もう2元だとさ。足元見やがってと不機嫌に12元を支払い、気分悪く国境へと向かう事になる。後で日本で聞いたら、トランクに荷物を納めた分の料金ではないかと。無知と言うことはとかく誤解を招きやすいものだと後になって反省する。

 青空の広がるシンセンを背に、これから香港に戻る。ここ、福田岸口は羅湖に続く二つ目のチェックポイント。香港側にも東鐵線の電車が乗り入れている。羅湖に比べれば空いていると聞いているが、さて。
 まずは中国の出国手続きとなる。聞いていた程には空いていらず、むしろ混んでいる。平日の午前中、時間帯もあるのか無いのか、大行列の「外国人」ブース目指して20分程掛かったか。出国のスタンプを押されたのは確か9:40過ぎでは無かったか。
 シンセン川に掛かる橋を歩いて香港側に向かう。今度は香港の入国手続きである。どこの国も自国民と外国人を分けて扱う事が一般的な扱いだが、香港の場合、中国人は外国人と言うことなっている。自国民のブースががら空きなのを尻目に長蛇の列が出来ている外国人側に並ぶことなる。前後はみんな中国人。列は流れているが、絶対的に長い。長過ぎる。
 じりじりじりと進む列に並ぶことしばし。一国二制度の事に思いは巡る。国境が無くなれば、勿論、手間と時間は省ける。チェックポイントは当然無くなる。東鐵線とシンセン4号線が直通運転になるだろうから40分少々でホンハムに運ばれるに違いない。経済的効果は絶大だろうし、行列に関する損失は間違いなく無くなる。
 でも、国境があるからこそ、中華人民共和国と言う制度に押しつぶされずに香港が輝いていられる訳で、国境越えに関する手間は、受け入れざるを得ないのだろうなぁと。それを一番良く知っているのは他でもない中国政府なのだろうが。
 ようやく順番が来て入国手続きとなる。もう10時を過ぎている。ホテルの部屋から東鐵線の駅を見たのが9時。そこから1時間以上過ぎてしまった。ずいぶんと時間が掛かるものだ。香港に比べるとシンセンの宿泊費は圧倒的に安い。シンセンにホテルを取り香港に通った方が滞在費は安いなあと思った事もあるのだけど、今日の国境越えに掛かる時間を考えるとやめた方がいいように思える。

 国境を越えるとすぐ駅がある。福田のチェックポイント開設と共に設けられた、東鐵線の落馬洲駅だ。この先、上水で本線に合流するいわば枝線。来たら必ず国境越えが伴うが故に延伸したのは知っていたが乗るのは初めてである。昨日、福田岸口に宿泊した理由の一つ、でもある。

 電車は12分毎にあって次は10:24である。冷房の効いた車内は空いている。国境の混雑ぶりからすると意外だが、国境の処理能力を絞っているのかもしれない。折角のインフラ整備なのに勿体無い事だ。
 がら空きの電車は時間がが来てドアを閉める。湿地帯に設けられた高架線。左手にシンセンの街が遠くなると地下に入る。速度は上がらないままガガガギギギガガガ。気がつくと地上に出て本線と合流。上水到着となる。ここからは普通の東鐵線電車である。列車は快調に新界を走る。
 上水からでも沙田からでも空港行きのリムジンバスは走っていそうだし、バスの方が間違いなく早く安く空港に着くけれど、電車に乗り続ける。降りたのは九龍塘。観塘線に乗り換えて旺角に出るとさらに、茎湾線。海を渡って中環まで来てしまう。
 東京に東京駅があるように香港に香港駅がある。それが大陸への玄関となる紅磡ではなく、機場快綫の始発駅の名であるのは不思議と言ったら不思議だ。中環の駅からラッチ内通路を歩くと

 香港駅の文字。この先、東涌線と機場快綫の乗り場がそれぞれある。機場快綫は運賃、別仕立だから中間改札がある。そこをオクトパスで通ると差し引かれた運賃、60HKD弱。香港-機場の正規運賃が100HKDだが、オクトパスを使って機場快綫と地下鉄を通しで乗ると地下鉄がタダになる規定があってそれが適用された訳。地下鉄、普通に乗る分にはせいぜい10HKDとかそんな範囲でしか運賃は掛からないが、国境が絡むと、つまり羅湖と落馬洲の発着ではとたんに運賃が跳ね上がって40HKD近い運賃となる。香港の物価を考えると100HKDという運賃は恐ろしく高く、40HKDと言う運賃も一食分だなぁとなるが、二つを足すと安くなると言うのは面白い、と言うかうまく立ち回った。
 勿論、運賃制度を試したくてわざわざ香港島に渡った訳でなく、機場快綫の香港−九龍が未乗だったからいわば落ち穂拾いでやってきた。空港方面の電車、極めつけに空いた状態で出発を待っていて、まもなく出発となる。走ってしまえばトンネルの中。外が見えるわけでなく、まもなく九龍。この先は既乗区間である。

 車内、天井にまで及ぶ大がかりな広告電車で20分少々。飛行機の姿が見えてきて、空港到着となる。当然の事ながらほぼ全員が下車するが、自分は残る。電車は数分停まった後でドアがを閉めた。さらに先へとゆっくり動き出す。
 機場の先、博覧館という駅があり、ここが機場快綫の終点。この一区間も乗っていないから同じく落ち穂拾いだ。線路がカーブしてゆくとまもなく1面1線。ささやかな駅に着く。

 終着の博覧館。これで一応は香港の鉄道、現時点で乗れる所は乗り尽くした。完乗とならないのは残念で、東鐵線、競馬開催時のみ運転される迂回線の一区間が残っている。
 博覧館の駅はまだ空港の敷地内らしい。ちょうどRWy25Rのアプローチと平行になっているようで、着陸機が目の前を通ってゆく。しばらく写真を撮れば楽しい所かも知れない。まあ例によって注意されるかも知れないが。

 1枚だけ押さえて空港に戻る。成田行きJL732便が出発する2時間半前の12時半。早い時間ではあるが、一駅乗り越した以外はどこにも寄らずに空港に来たことを考えると、ちょっと時間が掛かっている。
 搭乗手続きは空いていた。夏休み中とは言え火曜日というのは中途半端なのかも知れない。早速出国。今日の香港滞在はわずか3時間、と言うことになる。
 お昼時だしCXのラウンジに寄る。着く頃には13時近かったか、お馴染みヌードルバーは空いていた。

 蘭州風と言う触れ込み、記憶が定かでないけどそんな麺を頼んで、ビールと一緒に頂く。汁が日本人好みの熱さ加減で、ちょっと珍しい。美味しく頂ける。
 ロングバーでくつろぐ、事も考えたがたまたまバーテンダーの姿が見えなかったからやめる。ちょっと考えてから残り時間はサクララウンジで過ごすことにした。何度か香港の空港は利用しているが、いつもCXのラウンジばかりで、JAL本来のサクララウンジは使ったことがない。

 65番付近のCXのラウンジから41番近くのJLのラウンジへ移動中。見かけたのはキングフィッシャー航空の機材。
 成田行き、JL732便の搭乗口近くにラウンジがある。本来であればここで搭乗開始を待つのが筋だし便利な所だ。係員に搭乗券を見せると、恭しく奥の区切られたエリアに案内される。

 ファーストクラス利用者専用のエリア。ファーストの利用者は最大でも12人の筈だが、その4倍ぐらいは椅子が並んでいる。先客は一人だけ。

 いつもの紙おしぼりが恭しく運ばれてきて、飲み物のオーダーを聞かれる。成田のファーストクラスラウンジでもセルフサービスなのに、香港では係員が運んできてくれるらしい。
 ビールが欲しいがアサヒの生とキリン、アサヒ、サンミゲルの缶と言うラインナップなのでサンミゲルをお願いする。

 待つことしばし、枝豆、あられと一緒に運ばれてきた。
 本来のファーストクラス利用者しか使えないからか混雑しているラウンジの中なのに極め付けに空いている。時々、空席があると思って人が座っても、居心地が妙なのか、すぐにいなくなってしまう。結局出発までにここに案内されたのは自分を含めて全部で3人。残りの二人は初老ぐらいの男性個人客で、まぁどこかの会社か何かの偉い人なのだろう。
 途中、搭乗口が変更になったという案内が流れて、ファーストの客には個別に案内をしていた。いつもの41番ではなく今日は43番だそうだ。
 14時半になったのでそろそろ搭乗口に向かう。直前の変更で若干距離は伸びたがそれでも近い。直前になっておみやげを少々物色。43番搭乗口に向かうと待っていたのは

 来るときと同じ、JA8077だ。