こんな事はしたくなかったけど

 秋田貨物駅を過ぎ、元秋田機関区の廃墟が流れ出す頃、到着案内が流れ出す。接続列車のご案内。「秋田新幹線、こまち12号、東京行きは10:04」に乗らなくてはならない。折角の秋田でもう少し時間を取りたいものだけど、どう考えてもこの列車で帰らないと後々がおかしなことになる。
 秋田到着9:56。こまちは既にホームで出発を待っている。8分乗継では何にも出来ない。せめてと昼食用の駅弁だけ買って指定された座席へ。10:04、新幹線はゆっくりと快晴の秋田を離れて、徐々に速度を上げてゆく。太平山の姿がちらっと見えた。
 12BはR6編成。秋田から東京までは4時間ちょっとの旅。車掌さんは秋田運輸区。大館名物鶏めしを携えた車内販売のお姉さんも秋田営業所の担当で東京まで行くのだそうな。車内広告も金萬に諸越と地元の銘菓がどんと構え、秋田が東京へと乗り込んでゆくような雰囲気。でも、進行方向と逆に向けた座席が並ぶ車内はずいぶんと空いている。こんなに空いてて良いの?と思ってしまうぐらい。
 
 取り敢えず時間もあるし、秋田訛りが心地よいお姉さんからコーヒーを買い求め、昨日の恥辱を進めてしまいます。アイスコーヒーは¥300也。
 奥羽線を淡々と走るこまち、本当に静々と歩みを進める。落ち着いた乗り心地が素晴らしい。なのにこの空きっぷりは何?と思っていたら走る方向が変わる大曲で乗車多数。ようやく列車の体裁が整う。
 列車は向きを変え、田沢湖線へ。
 ミニ新幹線なんて言葉、最早死語ではありますが、建設に関する議論が行われていた頃、大曲での方向転換をどうする、ショートカットするべか?なんて話、盛んに行われてました。結局、一番安くつく今のまま、と言う結論になって、こまちは新幹線を名乗る列車の中で唯一、途中で走る向きを変える列車と言う、ある意味不名誉な称号を抱いている訳ですが、
 
 大よそ新幹線から見える車窓、とは思えないような景色を眺めているとそんな事、どうでも良くなります。苦情とか聞いたことないですし。
 角館でも乗車多数、すっかり賑やかになったこまちは田沢湖を過ぎ、岩手へと続く峠へ。谷が狭まり、列車はゆっくりとトンネルへ。およそ新幹線とは思えない光景で、田沢湖線は結局、田沢湖線
 
 岩手県側、雲が広がっていました。秋田が快晴だっただけに、おやおやと思います。
 雲が目立ちながらも時折太陽が顔を覗かせる岩手の景色。反対側に見える岩手山の残雪に心を奪われていると、まもなく盛岡。列車は高架へと駆け上がり、立派な新幹線の線路へと寄り添うと盛岡駅着。恐ろしく大きな盛岡の新幹線駅で、八戸からのはやてと一緒になり、東京を目指します。
 連結が終了、ドアが開くとまもなく発車。ぐんぐん加速し、今度は揺れも大きくなって。正直、乗り心地は盛岡までと雲泥の差。容赦なく加速してゆき、次の駅がすぐに流れて行きます。