どさ?ゆさ!

 辺りがすっと静まり返った。何処だろうとカーテンを開ける。村上。まだ暗い。今日最初の停車駅。
 列車が走り出す。通路の補助椅子に座って暫く景色を眺めてみた。笹川流れの辺りを走っている。ぽつんぽつんと現れる街路灯の向こうに何時までも見えているのは漁火だろうか。本当に上越線を廻ってきたんだな、何てことを改めて思ってみた。もう少し、寝ておこうか。
 再び目覚めると既に辺りは明るい。まだどこかの駅に停まっている。ベットの上で何故か羽後本荘だと思ったのだけど、カーテンを開けるとそこは酒田。新潟へ向かう1番列車、2番列車となるであろう特急車両が構内にたむろしている。まだ目覚めるには早い時刻。
 3度目の目覚め。列車は既に秋田県内に入っていた。田植えの終わった水田が美しく広がる。空は曇りがち。気難しい鳥海の高嶺は今日も姿を現してくれない。
 もういい加減、起きようか。列車は今度こそ羽後本荘へ。自分よりも早起きの人たちが、10数人、改札へと向かう。
 羽越線は気まぐれに海のそばを走る。元気の無い松の向こうに日本海が見えて来る。冬と違って、優しく穏やかな日本海。でも今日は鉛色に沈んでいる。
 
♪ちゃらららちゃららん ちゃららららん ちゃん
「お早うございます。ただ今の時刻は6月9日6時26分でございます。列車は時刻通り運転しております。あと20分で秋田に到着致します。秋田でお降りのお客様、お支度をしてお待ち願います。」
 
 海が分かれて、徐々に市内へと入ってゆく。大きな大きな雄物川を渡ると奥羽線が近寄ってきて、秋田到着。割と事細かな案内が入る。この先は車内販売もあるそうだけど、弁当には数に限りがありますと。ホーム、5号車付近で駅弁の販売も行っているとの事なので、ホームに出てみた。
 
 人だかりが出来てます。駅弁、それこそ飛ぶように売れて売れて。ここまで気持ちよく売れてゆくの、久し振りに見たわ。