春を巻き戻す

 中途半端に寝坊してしまった。
 思いっ切り寝坊したなら今日の行程は諦めたかもしれないけど、頑張ればリカバリ出来る程度の寝坊。でも余裕ないなぁ。バタバタバタと支度して、何とか始発電車に転がり込む。18きっぷの5日目に日付印を押してもらう。
 今日は東神奈川から横浜線。ぐっすり寝込んでたどり着くのが八王子。この先中央線だけど、頑張って起きて来たのでちょっと寄り道。

 私、一応、京王線地獄の管理人ですので。
 8時を目処に高尾に出る。京王線の高架ホームから中央線の地上ホームを見ると、リュックサックや何やらを背負った中高年がずらっと並んでいる。どうやら中央線の普通列車がすぐあるらしい。8:01の甲府行き普通列車、大混雑。18きっぷが使える最後の週末だし、予想通りの混雑振り。
 賑々しい列車の隅っこで一人小さくなっていると列車は走り出す。小仏トンネルを越えるの、久し振りだ。沿線、ちょうど桜が盛り。季節が少し戻った感じがする。早速相模湖で特急列車の通過待ち。この先、何度となく抜かれてゆく、筈。
 列車は甲府まで行くけど、とりあえず大月で下車。朝食、まだなんです。

【今日の駅弁】特製 幕の内弁当 ¥650 (株)桂川

 大月には、何故か駅弁屋が残っている。有名でもなんでもないし、利用客がたくさん居るわけでもなし。条件としては極めつけに悪い筈なのに、頑張っている。
 折角だし、応援の意味も込めて食べてみる。上りホームのコンビニ風売店。「お弁当」の幟は立っているけど駅弁の姿は見えず。「お弁当ありますか」と聞いたら「そこにあります」と。うんと下のほうにこじんまりと。これじゃ気付かないよ。


 と言うわけで、ごくごく普通の幕の内弁当を手に入れ、ホームのベンチで。ご飯がちょっとぱさつき気味なのが致命的。悲しい。おかずは値段相応の感じですが、蕗の煮物がよござんした。

花花花の甲州

 お弁当を食べている間に次の普通列車甲府行きが来る。またもや中高年ハイカーをたくさん載せて。多少大月で降りていったのでロングシートだけと席にはありつけた。2度目の特急退避の後、笹子の峠へと軽やかに立ち向かう。
 笹子の長いトンネルを抜けると甲府盆地へと緩やかな下り。

 勝沼で満開の桜に出会う。車内がざわめく。更に下ってゆくと今度は濃いピンクの絨毯。桃の木だ。所々に黄色い菜の花。こんな景色を毎日眺めていたら、ほんわかと生きてゆけるんかな、そんな事をふと思う。
 ハイカーさんが降りてゆくのと入れ違いに街へと遊びに行く人たちで混雑しだすと終点甲府。ここでまた乗換え。
 今度は小淵沢行き。これも確か八王子始発の電車だ。最初からこれに乗って来ても良かったのだけど、まぁ良い。甲府盆地を西へと向かう。今度の車窓には、甲斐の山々がお供してくれる。
 日野春でまたまた特急退避。たくさんの人がホームへと降りてきて、目の前に見える甲斐駒ケ岳かな、を眺めたり写真を撮ったり。

 写真:抜かれてゆくのもまた、楽し

小淵沢の名物

 列車は終点、小淵沢に到着。ここで乗換えとなる。後から来るのは甲府始発の長野行き。それなら甲府で待っていれば確実に座れるのだろうけど、訳あって小淵沢まで来た。と言うか、小淵沢に来ないと中央本線に乗った意味が無い。

 ホームの駅そば。
 これまであちこちで駅そば食べてきたけど、強いてベスト3を上げるとすれば「音威子府」「小淵沢」「姫路」かなぁと思っている。小淵沢の蕎麦は、学生の頃、飯田線に乗りに行った時など本当にお世話になった。でもここしばらくはご無沙汰。今日は折角の中央本線だし、是非とも食べてゆきたい。
 乗継時間は20分。多分大丈夫だろうけどお昼時だし、順番待ちになるといやだなぁと思って予め駅そばの売店の辺りの車両に乗っておいた。着いてみると本当にまん前。一番に食券販売機へ。あれ?食券販売機なんてあったっけ?

 と言うわけで久し振りに有り付いた小淵沢駅丸政さんの山菜そば¥340。蕎麦は太めの藪蕎麦。汁は関東スタンダード。味も値段も変わってませんでした。

 一つ仕事を終えた感じで、乗り込んだ長野行き。分水嶺を越えて諏訪平へと下ってゆく間に寝てしまった。よほど安心したらしい。気が付くと上諏訪を出る所。高架に上がると諏訪湖がちらっと見えている。もう一度分水嶺。今度はようやく今日の目的地、松本。
 今日の目的地、なんて書いてしまったけど松本滞在はわずか15分。駅の近くにあるバスターミナルから空港行きのリムジンに乗る。松本平をちょこちょこ走る。途中見えた桜、蕾が開きかけている所。小さな空港へと到着。本当の目的地は、ここかな。

JL2854 JA8370 MD-87 MMJCTS



 今日は松本空港から千歳へと飛ぶ。午前中の中央本線はある意味、前座だった訳。
 昨今の経営不振がどうのこうので、再建計画とやらが発表になって、その中に歌われていた一つが「不採算路線からの撤退」。10路線ぐらいだったかな、が対象だったけど今日これから搭乗する松本-新千歳と言うのも対象の一つであり、発表後に一番揉めたのがこの路線だったりする。
 こんなルートを取る事にしたのは元々興味があったからとは言え、背中を押してくれたのはこの撤退騒ぎだった、のは間違いない。そして今日、今まで縁の無かった小ぢんまりとした空港へやって来ている。
 展望デッキに出る。有料で¥100。遊具やら自販機がある訳でなし、シンプルな展望デッキ。柵がないのは本当にありがたい。見学の家族連れが結構居る。でも空港の廻り、結構見る所はありそう。

 小型機が来たり

 ヘリコプターが来たり
 しているのを眺めていると遠くに光る点。

 新千歳から、MD-87、到着。
 滑走路端でぐるりと廻って、スポットへ。

 ギャラリーの数、凄いですねぇ。
 さて、搭乗待合室へ。
 ワンワールドに加盟してから初めての搭乗ですが、ワンワールドのステータスが印字されるんですね。こんな感じです。

 保安検査場でチケットを係員、JALのグランドホステスだったけど、に見せたら「いつもご搭乗ありがとうございます」と。保安検査場でそんな事言われたの、羽田のDPラウンジ前の検査場以外では初めてかも。
 待合室に居る人数を数えてみる。ざっと60〜70人ぐらいかな。搭乗率にして6割程度となるでしょうか。優先搭乗の案内があって、3〜4組か、何時に無く多くの子供連れが案内された後、14:25ごろ、搭乗開始。飛行機の出入り口横にはワンワールドのマークが。   
 前と後ろで雰囲気ががらりと変わるDC-9の系列。今日はエンジン音を楽しもうと指定出来る一番後ろの座席にしてみた。窓からは前方に翼が後方にエンジンが見える席。居住性には?がたくさんつきそうだけど、音がしないと飛行機に乗った気分になれない自分には、楽しい座席。前方はだいぶ埋まっているけど後方座席は窓側に各1人ずつなので、居住性も差し引きゼロかもしれない。
 14:35、Doorclose。まもなくPusubuckが始まる。「ワンワールドメンバー、JALをご利用頂きありがとうございます」なんて案内がちょっと新鮮。新千歳までの飛行時間は1時間15分との事。上昇中、揺れが予想されるそうだ。貰った新聞は愛知県版。14:40、Taixing。滑走路を南側へ向かい、滑走路端をぐるりと廻る。
 Takeoffだ。居住まいを正す。松本をMD-87で飛び立つのはこれが最初で最後かもしれない。うんと背中を押される。14:43、Takeoff、RWyXX。浮き上がると下から押される感触。こんな離陸はあんまり経験ないなぁ。松本平が霞んでゆく。視線を横に投げると北アルプスの山々が霞んでいる。何時まで経っても目の先に山が付いて廻るのは、松本ならではの眺めかもしれない。
 飛行機は雲へと突っ込む。揺れ揺れ揺れ。そして青空。揺れが落ち着く。まもなくベルト着用サイン消灯、14:50。眼下は一面の雲海。

 雲海の上をMD-87がゆく。

 ちらっと雪山が見えたけど、写真じゃわかり難いなぁ。
 少しづつ雲が切れてくると窓の外は一面の青い世界。海の上へと出ているようだ。白い航跡も見えている。

 ドリンクサービスが来る。コーヒーを頂く。

 機長さんから案内。15:02。「本日も日本航空の翼をお選びいただきありがとうございます。機長の●●でございます」と他で聞いたこと無い丁寧な出だし。2分ほど前に新潟市上空を通過したとの事。高度は10,000m。このあと13分後に秋田市上空を通過し、青森市上空、津軽海峡を経て新千歳空港上空には定刻よりも5分早い15:55、18番スポットに到着する見込みとの事。この後も「ただ今、右手に山形と秋田の県境になる、鳥海山をご覧いただけます」なんて案内もあったり。自分は左手に座っていたから生憎見れなかったけど、鳥海山が姿を見せるには、珍しいなぁ。

 気付いたら八郎潟干拓地が見えている。15:16。飛行機はこの先内陸へ差し掛かる。白神山地の残雪も見えた。雲に半分溶け込んでしまうのが残念。その後はひたすらな雲海の上。
 15:25、あと10分でベルト着用サインが点灯する旨、案内される。何となく降下するような感触を覚える。15:41、ベルト着用サイン点灯。あと10分で着陸だそうな。
 高度を落とすと地上がちらちら見えて来た。所々残雪。早春の装い、と言うより雲に閉ざされた暗い大地はまだ冬が居座っているような雰囲気。機内も暗くなる。冬の大地が近づいて、近づいて、15:51、Landing、RWy19L。Spot in SP18、15:55。予告通り。

 この後は18:20の羽田行きに搭乗。ひとまずカウンタでクラスJの空席待ちを入れる。てっきりクラスJで取れているものだと思い込んでいたけど、Webチェックインしてみたら、普通席だったので。

 時間があるし、どういう訳か空腹を覚えるのでありきたりのラーメン道場。時間帯のせいか空いていて呼び込みに少し閉口。

 食べた事の無い一番奥の札幌ラーメンに入ってみたけど、麺がくっついて出てきてちょっと閉口。これならさっさとラウンジに行けば良かった。

 残った時間はラウンジで恥辱を進めておく。

JL534 JA8189 B747-300 CTSHND

 空席待ちの呼び出しは18:05、少し早い目にラウンジから出たらそのタイミングで呼び出しが入った。どうやら確定の様子。「窓側通路側どちらになさいますか」なんて事まで言われる。まさか選べるとは思ってなかった。まもなく新しい航空券を渡される。
 宛がわれたのはクラスJの最後方窓側。どうやら並びでキャンセルが出たようで隣はキャンセル待ちカウンタで見掛けた人だ。それで選べたのか。

 何時の間にか満員御礼の×印が付いていた飛行機だけど、順調に搭乗が進み、ほぼ定刻、18:20にDoorclose。18:21、Pushbuck。「ワンワールドメンバー、JAL」と言う案内をまた聞くことになる。羽田までの飛行時間は1時間20分との事。松本から来た時より時間が掛かる。風向きもあるだろうけど、マイル数だけ比較すると若干と言え、松本-新千歳の方が近かったりする。
 18:26、Taixing。すっかり夜の帳が下りた空港。誘導灯を眺めながらガタゴトガタゴト。ガタゴトが停まると一瞬静寂が訪れた後、ジェットエンジンの轟音が通り過ぎてゆく。着陸機をやり過したようだ。再び、ガタゴト。滑走路の灯りが滲む。エンジン音が響き渡る。そして背中をぐんと押される。18:31、Takeoff RWy19R。

 揺れる訳でもなく、順調に高度を上げて行ったのだろう。ベルト着用サインが消えた。18:39。窓の外、ほのかに西の空に赤みを残している。右側に二つ並んだエンジンのシルエットが浮かんでいる。下界は雲に覆われているようだ。NHKニュースの放映、ドリンクサービスの開始。全てが恙無く進んでいる様子。

 18:54、機長さんから飛行状況の案内。ただ今高度11,600mを対地速度770km/hにて飛行中とのこと。あと8分ほどで花巻の上空を通過する。羽田着陸は定刻よりも5分ほど早く、19:50となるそうだ。羽田降下時は揺れが予想されるとの事。

 ドリンクサービスが廻ってくる。お菓子は抹茶サンド。自分のフライトでは初顔です。
 19時を過ぎると窓の外、すっかり暗くなる。地上の明かりも見えない。ちょっと間を持て余す感じなので、恥辱を書き進めておく。
 19:10、気持ち揺れた感じ。一瞬だったためかベルト着用サインは消えたまま。機体は落ち着きを取り戻すと、なお雲海の上を羽田へと急ぐ。19:20、あと10分でベルト着用サインが点灯する旨が案内された。
 パソコンの画面に向かっていると時計が19:30となる。そろそろかなと思っているとベルト着用サイン、点灯。そのとたんに揺れだす。何か進行方向を軸にしてぐるぐる廻されるような揺れだ。19:35、あと15分で着陸と告げられる。
 ふと窓の外を見ると、一面の街灯りが広がっている。19:41。千葉の上空まで来た。灯りが所々黒く染められているのは雲の影。ビア樽のような黒点は、自機のエンジン。洋上へ出る。右手には街灯りが続く。今日の着陸はRWy16の様子。お台場の観覧車が見えてきた。その向こうに東京タワー。案外と暗い気がする。良く見ると街が雨に濡れている。予報通りに天気が崩れたようだ。
 雨に濡れ、黒く沈んだ埠頭が過ぎてゆく。海が一面に広がる。不意に空港、19:47、Landing、RWy16L。綺麗な、綺麗な着地だ。殆ど衝撃を感じなかった。19:56、Spot in SP15。