ツポレフ

ツポレフ-214

 目を覚ますと7:30だった。昨日は酔っ払った挙句に何時に寝たものやらよく分からないけれど、恐らくは22時とか23時とかその辺だろう。本当に良く寝たけど、漠然と長岡-小出を往復してみようと思っていたプランはどうやらご破算の様相だ。急げば間に合うけど慌しくチェックアウトしてまで行きたいとも思っていない。適当な流れでどこへ行くかは決める事にして、まずはゆるゆると準備をする。9時ちょっと前に駅に着く。この後の列車は新潟行きと直江津行き、どちらも同じような時間だ。直江津行きで柏崎から越後線に乗り新潟に向かうと言う手もあるけど、今日は新潟ゆきにする。無論、このまま新潟に向かっても到着するのが早すぎるからどこかに寄り道することになる。新津から新発田を廻るか、ちょこっと磐越西線に乗るか、東三条から弥彦線に乗っても良い。5両編成の新潟ゆき、新潟に買い物に出るらしい人たちで一駅ごとに乗客が膨らむ。最初は一人だった自分のボックスも一人また一人と増えてゆく。
 東三条弥彦線の乗り継ぎ案内がある。30分ぐらいの接続なら乗り換えてもいいかなと思うけど、10分ちょっとの接続で弥彦線がある。それなら乗り換える。乗り場の様子が記憶と変わっている。昔は一旦信越線の下をくぐって、新潟方向に向かって右側にあったと思うけど、今は左側に片面の乗り場。いつ線路が切り替わったのだろう。切り替わった後に乗った記憶が無い。思った以上にたくさんの人が乗り換えてゆく。乗り継ぐ列車は2両編成。ボックスもロング部分も一通りは埋まっているので相席となる。その後も結構乗ってくるお客さんが多くて、発車間際には立ち客も出る盛況となる。
 列車は高架線を三条市内を見下ろすように走ってゆく。東三条北三条燕三条、燕、西燕。三条と燕しかないなぁ。すこしつづ乗り降りしていた乗客が一斉に降りていったのは新幹線乗り換えとなる燕三条。帰省客と言うよりはちょっとそこまでと言った感じのお客さんが多いし、新幹線で新潟に行くのか、それとも近くに大きなショッピングセンターがあるのか、事情はよそ者には分からない。
 越後線とのジャンクション、吉田に着く。列車はこの先、弥彦まで行く。このまま新潟に行こうか、弥彦まで行こうか、ちょっと迷う。越後線は1時間に1本。弥彦まで行って戻って越後線に乗れば12時過ぎの新潟着でちょうど良いようにも思える。それなら弥彦まで行ってしまおう。列車はしばらく発車待ち。弥彦からの上り列車が来る。まだ発車まで時間がある。駅員さんがなにやら運転士さんに渡している。タブレットだ。この先の区間、まだタブレットを使っていたんだ。
 列車がおもむろに発車する。途中、大きな鳥居。弥彦神社の鳥居だ。だんだん向かう先の山が大きくなり、もう先には進めません、と力尽きたがごとくに到着したのが弥彦。
 折り返しの時間を確かめる。おや、12:12まで列車が無い。2時間弱も開くのか。列車は回送表記を出して吉田側に折り返して行った。回送するぐらいなら乗せてくれ。駅前のバス停を調べる。この辺を巡回するバスはあっても吉田や新潟に行くバスは無いようだ。動きが取れなくなった。
 この際、弥彦神社にお参りでもしておとなしく12:12の電車で吉田経由、新潟に向かってもイイのかもしれない。とは言え、12:15に新潟には着いていたい。ここで悩む。駅前には1台、タクシーが居る。あれに乗れば吉田まではたいして時間は掛かるまい。気まぐれでローカル線のどん詰まりまで来た挙句の果てにタクシーを奮発なんてアホそのものだけど、自業自得だ。仕方あるまい。タクシーで吉田まで戻る。
 先ほど電車から見えた道路をタクシーは走ってゆく。最初は60km/hぐらいで順調に走っていたけど、そのうち前のクルマに行く手を遮られ、40km/hになる。信号ごとに捕まる。途中、弥彦村役場の前に新潟行きという高速バスのポールが立っている。ここまで歩いて高速バスって手もあったようだけど今更ジタバタしない。鳥居をくぐる。そのうち吉田市街に入って思ったよりも早く吉田駅前に到着。\1,600也。
 次の新潟ゆきまではだいぶ時間がある。これなら歩いてもいい所まで来れたかもしれないなんて思う。まぁ地理不案内だし、仕方が無い。列車を待っていると弥彦線からまた列車が来る。回送列車。NODOKAと書いている。カーペットカーだって。初詣客対象に新潟発弥彦行きとして臨時列車が走っていたらしい。その折り返しの回送である。2本も回送で走らせるなら、本当、営業してくれてもいいじゃん。本気で思う。後で時刻表で見ると元旦2日は営業していたらしいのだけど。
 越後線の新潟行きは柏崎始発列車。どうやら長岡で9時の直江津ゆきに乗っていると、柏崎でこれからやって来る越後線に乗れた様子。列車は2両編成。1時間前に見かけた吉田始発の新潟行きは3両か4両だったけどなぁ。吉田で席が一杯になる。この先、大丈夫かな。車掌が女性だ。JR東日本でもローカル線にまで女性係員が進出しているのねん。その割りに地元の京浜東北線じゃ見たことないなぁ。運転士にお疲れ様です、と声をかけている。なるほどねぇ、職場環境が変わる訳ですねぇ。
 列車は例によって一駅ごとにお客が増える。立ち客でだんだん一杯になってゆく。2両じゃ苦しいんでないかい。その割には吉田には留置車両がいたし、どうも車両の需給を読み間違えているような気がする。新潟市内に入って20分毎の運転区間に入っても乗ってくる乗客の数は変わらない。時折すれ違う列車、ロングシートE127系だったり、セミクロスシートの3両編成だったり。どうやら乗った列車がある意味、ババだったのかもしれない。溢れんばかりの乗客を乗せて、新潟着12:15。
 ここから空港に向かう。連絡バスが毎時00分、30分であることは前もって調べてあった。バスターミナルで乗り場を探すと行列の出来ている乗り場が一つあって、ここがリムジンバスの乗り場だった。航空機の臨時増便に合わせてバスの臨時増便の案内も出ている。8時台は10分毎だそうな。この時間帯が離陸ラッシュ、なのかな。行列が出来ている割にはバスに乗ってみると意外なほど席は埋まらない。半分弱、と言ったところかなぁ。バスは空港へと向かう。途中、見覚えのあるような風景が過ぎる。小樽航路の埠頭のそばだ。5時に新潟に着いて寒い中、路線バスを待ったのは5年前の事。
 新潟空港に着く。想像以上に綺麗な、立派なターミナルだ。まずは搭乗手続き。15:10の前、13:20という便もあるけど特定便割引なので振り替えは不可。素直に15:10の便になる。無論、写真を撮ってゆきたくて早い目に来た訳だし、全くもって構わない。腹が減ったので先に食事。新潟小千谷○○そばの文字が目に入ったので迷わず入ってへぎ蕎麦を食べる。結構混んでいて蕎麦一つがなかなか出てこないし、空港価格で小千谷で食べるよりも相当高いけど蕎麦自体は美味しかった。
 展望デッキに出る。入場料\100。カードを買ってゲートに挿入すると通れる仕組み。カードは回収されてしまう。カードが妙に擦れていると思ったら使いまわしをしているらしい。展望デッキは家族連れを中心に賑わっている。ちょうど13:20発、JASカラーのエアバスA300、JA8369がpushbuckを始めたところ。見送り客も大勢いて飛行機に向けて手を振る。パイロットが手を振り返す。
 空港の向こうはすぐ海だ。左手には信濃川の河口、そして新潟港。右手には阿賀野川の河口、その背景に朝日連峰、飯豊連峰が白く輝く。気持ちの良い眺めである。誘導路から滑走路に出たJA8369が一呼吸おいてエンジン音を轟かせる。機首を上げ青空に吸い込まれてゆく。西の彼方、南へと旋回してゆくのが小さく見えた。
 今度は東の空、飯豊連峰の上に小さな機影が見えた。着陸機らしい。何が来るのかなと見る。細い機体の後ろ側に双発のエンジン。DC-9の系列だ。近づいてくる。レインボーカラーと言う事はMD-90、JA8065。伊丹からの到着便、折り返し14:00の伊丹行きだそうな。
 しばらく離着陸の無い時間帯だけどもう一機なにか近づく。軽飛行機だねぇ、着陸するのかと思ったらtouch down寸前に機首上げ。旋回してきてもう一度、今度はtouch and go。正月3日から訓練らしい。
 14:00過ぎ、飯豊連峰の上に再び機影が見えた。目的機かなぁと思う。近づいてくるとエアバスである事が分かる。A300-B4。JA8560。帰りに乗る便だ。着陸した後、スポットの入る手前の誘導路で停止。どうやらMD-90の居るスポットに入るらしい。MD-90がpushbuckを始めて空いた6番スポットへ入れ替わりに入ってゆく。一瞬、新潟で2機のJAS機が重なる。
 MD-90が離陸してゆく。A300からはパイロットが降りてくる。3名。A-300だと航空機関士がいるんだったっけ。地上整備員がエンジンの前で記念撮影をしている。A300も新潟に来るのは明日まで。次の便はもう夜間帯だし最後の記念、か。やっぱり好きなんだろうなぁ飛行機のことが。
 東側に機影が見える。今度こそ目的機だろう。近づいてくる。見慣れぬシルエットに見慣れぬ塗装。見慣れぬ文字で書かれた見慣れぬロゴマーク。さきほど着陸した2機よりもずいぶん先でtouch down。TV-214と機首部にロゴ。ツポレフ214型、というらしい。ロシアはハバロフスクから来た便だ。スポットインはJAS機の隣り、7番になる。国内線と国際線が壁1枚を隔てただけで同居するターミナルだけに、なにか見慣れないと言うか、新鮮な光景だ。次いで見慣れた青い機材。ANAボーイングB767-300が着陸。スポットは5番。AirJAPANのロゴが小さく入っている。国際線機材が廻ってきたらしい。
 そろそろ搭乗口へと向かう。セキュリティーチェック。長蛇の列が出来ている。今度の便、搭乗率が何%か知らないけれど、定員300人のA300を捌くのに開いているゲートが1つ。JALの地上係員が時間短縮のため身に着けた金属製品はカバンに入れて欲しいと呼びかけている。普段は警備員がチェックする筈のチケットも今日はグランドホステスの担当。列はさらに伸びている。15:50新潟発のANAの乗客も居るらしい。JALの地上係員がゲートをもう一つ開けと警備員としきりにやり合っているが却下された模様。
 ようやく中に入れる。搭乗待合室、臨時売店まで出来ている。羽田便毎日8便就航で相当利用客が増えたのだろう。待合室内も人で溢れている。もう搭乗開始になっても良い頃だけどまだ搭乗にはならない。何か理由があって遅れているようだけど放送が良く聞こえず、要領を得ない。まもなく搭乗開始の案内があって行列に並ぶ。売店の前だ。ANAアテンダントさんが数人でやって来る。「ある?」「ありました」何かと思うと空弁。う〜ん、気になる。そんなに美味しいのか。アテンダントさんも自分も買わなかっただけに激しく謎だ。