【今日の駅弁】かきめし \950 厚岸駅前氏家待合室

 10年越し、と散々書いた。本当は11年越しかもしれない。最初に見たのは93年11月。聖蹟桜ヶ丘京王百貨店でやっていた駅弁大会でだった。「幻の駅弁」と看板を掲げ実演販売していたのがかきめしだった。現地で買えなくて東京で目の前で作っている。それを幻として売る、正直嫌らしかった。こんなところで買うものか、と心に決めた。翌年の10月。道東を旅した。影も形も無かった。その後も2度ほど厚岸を通っているが、まだ入っていないとか言われて買えなかった。だから本当に苦節10年なのである。
 10年越しの駅弁に箸をつける。小ぶりな牡蠣が4個。牡蠣の炊き込みご飯。牡蠣は身が引き締まっている。美味しい。牡蠣の炊き込みご飯。ちょい甘めな気がする。正直10年の期待を受け止めてくれる味ではないかもしれないけれど、食べられたことは自体は嬉しかった。
 釧路に着く。釧網線の列車は15:48まで無かった、2時間近い待ち時間。恥辱を待合室で書く。バッテリーが気になる。出来ればどこかで充電したいけどね。待合室は狭く、混んでくると居心地が悪くなる。根室線の改札をやっていたのでそれにあわせて中に入ってしまう。ホームのベンチで続き。こちらは寒い。先ほどの厚岸がうそのようだ。厚岸って江戸末期に開かれた街だっけ。居心地の良い土地を選んで進出したのかなぁと昨日思ったことと同じことを思ってみたりする。
 ここで当初の予定に戻った。木曜日に宿を予約しようとしたときまで考えていたのは函館10:30で普通列車を乗り継ぎ、滝川で宿泊。翌日の始発に乗ると釧路廻りでも網走に19時に着けるので女満別20:20と言う飛行機で帰京しようという一種の弾丸旅行だった。あるいは宿泊を札幌として翌日池田から北見に抜けても良いとも思っていた。それが旅の窓口楽天トラベルで宿を取る気がしなくなり、ふと思い立ったのがまりもを使って釧路へゆき納沙布を往復した後に女満別へ今日の向かうコース。
 ようやく列車が入って来て乗車となる。今日4度目のキハ54。こちらは以前の簡易リクライニングシートを見合式に並べた方式のまま。今度の網走行きは結構混んでいる。カバンが大きな遠距離の客も目に付く。隣りに座った人の持っていた切符、知床斜里と見えた。席が概ね埋まったなぁと言うときに札幌からのスーパーおおぞらが到着。乗り換え客があって立客が出る。時間が来て発車となる。午後4時前、もうあたりは薄暗く、そんなに進まないうちに暗くなってしまいそうだ。列車は釧路湿原の辺りを走っている筈だ。雪にうっすらと覆われ、枯れた蘆が空を向く。いつの間にか寝てしまった。気がつくと摩周だと言う。車内の客は半分ぐらいに減った感じだ。隣りのホームに釧路行きの列車が見える。あちらはがら空き。列車が発車する。もう真っ暗だ。また瞼が重くなる。折角の旅先で寝てしまうのも難だけど、明日の事を考えれば眠れる時に眠る事は良いこと。どうせ外は見えない訳だし。
 次に眼を覚ましたら知床斜里。隣りの人が降りてゆく。車内も空席が目立つようになったけど明らかに釧路から乗り続けている人もいる。少なくとも自分の他に5人かな。意外と居るものだなぁと思う。
 最後の区間はさすがに眠らずに過ごした。真っ暗闇の中を走り続け、時折駅に停まる。乗ってくる客も降りてくる客もいない。ただ、北浜や浜小清水なんて駅に併設されたレストランやらラーメン屋の暖かそうな光だけが印象に残る区間。網走の手前で、釧路から乗り続けていた人が一人二人と降りてゆく。このあたり、もう網走の市街地だったっけ。
 網走の駅前から空港へ行くバスは19:13の発車だと前もって確認してあった。さてバス停はと探してみる。歩道は凍てついている、完全なアイスバーン。そろりそろりと歩いてゆく。駅前の歩道に見えたバス停は別の系統だった。空港ゆきは駅から少し離れたバス停に着くらしい。またそろりそろりと歩いてゆく。50mほど離れたところに目的のバス停。バスが来るまではまだ15分ほどある。ここで待つのは寒い。バスターミナルまで歩こうかとも思う。ターミナル発は19:10。一旦駅に戻って地図を確認する。1kmぐらいあるようだ。時間はあと10分。足元がしっかりしていれば歩くところだけど、今日の歩き方で1km10分は無理だ。大人しく駅の待合室で待つことにする。テレビが天気予報をやっている。明日の天気、北海道地方は荒れるらしい。
 バスの時間が近づいたので三度そろりそろりと歩いてバス停へ。誰も待っていない。歩道と車道の間には雪が堆く重なっている。凍りついた道。こんな時間に網走にいて今日のうちに横浜に戻れるのが不思議な気がする。三沢の駅前でリムジンバスを待った時の事をちょっと思い浮かべる。5分ほどでバスが到着。リムジンバス、乗客が数人程度でたいそう空いている。しかも路線バスを兼ねている様だ。途中で降りる客もいる。